『鎌倉殿の13人』小栗旬、新垣結衣の涙の名演 宗時の死を受け入れ義時が覚醒へ

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第6回「悪い知らせ」。源頼朝(大泉洋)の一党は大庭景親(國村隼)率いる平家方の前に大敗を喫した。敵将・梶原景時(中村獅童)は山中に身を潜める頼朝の姿を目にするが、目と鼻の先にいる頼朝に他の武士たちが気づかないことに何かを感じたのか、何も言わずその場を立ち去った。一方、北条義時(小栗旬)は、父・時政(坂東彌十郎)とともに甲斐を治める武田信義(八嶋智人)に援軍を求めるが、結果は芳しくない。

 タイトルが示す通り、「悪い知らせ」が八重(新垣結衣)、そして義時と時政の耳に届く回となった。

 八重は伊豆山権現でかくまわれている政子(小池栄子)らの元へやってきた。SNSでも話題になっていたが、シーン前半は八重と政子による“夢枕対決”がコミカルに描かれている。その後、八重は子どもたちが遊ぶ姿を見かける。頼朝と政子の娘・大姫(難波ありさ)と目が合い、微笑みかけた八重の脳裏に千鶴丸(太田恵晴)が浮かんだ。伊豆山権現の長・文陽房覚淵(諏訪太朗)に「千鶴丸に会わせてほしい」と頼み込むと、八重はある墓の前に連れてこられる。

 我が子の死を突きつけられ、打ちひしがれる新垣の演技に心を締め付けられる。伊東の娘として、八重はどんな時も気高く気丈に振る舞ってきた。千鶴丸が眠る墓を前にした時も、その足はすでに悄然とした歩みだったが、凛とした表情を崩すまいとしていた。「立派なお墓……」と墓に手を伸ばした時も、そこにはまだ気丈さがあった。新垣は、八重のやるせない感情を指の先まで体現する。愛しい我が子を撫でるように墓に触れた八重の手は、段々と深い悲しみに覆われていく。号泣する八重の手がぎゅっと力強く握り締められる瞬間が何度かあった。その手は愛する子どもを奪われたことへの怒りにも、もう生きて帰ってこないことを知った苦しみにも見えた。墓の前で泣き崩れる八重のどうしようもない心の痛みは、墓にすがりつく両手、悲痛な叫びをあげながら力なく倒れ込む姿など、新垣の全身から伝わってくる。そして音のない演出が、八重の感情をより際立たせていた。

 義時と時政もまた「悪い知らせ」を受ける。安房国の安西景益(猪野学)の元へ身を寄せた義時の元へ、仁田忠常(高岸宏行)がやってくる。忠常は兄・宗時(片岡愛之助)が取りに戻ったはずの頼朝の観音像を持ってきた。頼朝の観音像が館に残っていたことを知り、時政と義時は宗時の死を察した。

 小栗と坂東の表情が崩れる瞬間が心苦しい。義時は父・時政に忠常から聞いた話を淡々と伝えていたが、観音像を見つめていた時政が無念な表情で顔をあげたのを見た途端、信じたくなかった宗時の死を改めて悟り、がっくりとうなだれた。時政は「三郎のばか!」「これからだってのに何やってんだか」と嘆く。この時、時政を演じている坂東が、時政の普段通りの声色で嘆いたことも胸を打つ。大切な家族を失った悲しみが、父としての声から伝わってきたからだ。義時が兄の死を確信してから、小栗は弱々しく泣いていた。一見打たれ弱いようにも見えるこの泣き姿によって、義時にとって兄がどれほど大きな存在だったかが感じられる。

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