吉田鋼太郎は日本のケネス・ブラナー 魅力が存分に発揮された『おいハンサム!!』の面白さ

 もちろんそうした喜劇だけに留まることはなく、映画『孤狼の血 LEVEL2』での怪演や『SUITS/スーツ2』(フジテレビ系)でのいかにも手強そうなヒール役も巧みにこなす。こうした娯楽色の強い悪役は、一歩間違えると大袈裟な演技になりかねないところだが、そのギリギリのラインをうまく攻めながら、それでいて画面全体を飲み込む大きな表現で作品ごと飲み込んでいく。これはまさに舞台俳優として培われた技であろう。なんといっても吉田はシェイクスピア俳優。自ら舞台演出も手がけており、さながら日本のケネス・ブラナーのような印象を受ける。

 すっかり立ち居振る舞いだけで“昭和”を体現できる俳優というのもずいぶん少なくなってきた。しかも『おいハンサム!!』というタイトルに使われている“ハンサム”という言葉自体も昭和のにおいが強く感じるほどだ。いずれにせよ昭和気質なキャラクターの扱い方は、現代においてはある種のコメディとして笑いに昇華するか、はたまた時代に取り残された哀愁を漂わせるかの二択である。ひとつの作品の中で両者を同時にやってのけ、時代の流れに抗う面倒臭さに、さらに『おっさんずラブ』で醸し出した持ち前の愛らしさも併せ持つとなれば、吉田鋼太郎にとって60代を代表する一本になることだろう。

■放送情報
『おいハンサム!!』
東海テレビ・フジテレビ系にて、毎週土曜23:40~24:35放送
出演:吉田鋼太郎、木南晴夏、佐久間由衣、武田玲奈、MEGUMI
企画:市野直親(東海テレビ)
原作:伊藤理佐『おいピータン‼』『おいおいピータン‼』(講談社『Kiss』連載)
Special Thanks:『渡る世間はオヤジばかり』(講談社 KissKC所載)、『チューネン娘。』(祥伝社フィールコミックス)、 『あさって朝子さん』(マガジンハウス)
脚本・演出:山口雅俊(ヒント)
エグゼクティブプロデューサー:宮川朋之(日本映画放送)
プロデューサー:山口雅俊(ヒント)、遠山圭介(東海テレビ)、塚田洋子(日本映画放送)、藤井理子(日本映画放送)、森正文(ヒント)
製作:東海テレビ、日本映画放送
(c)東海テレビ/日本映画放送

関連記事