『シジュウカラ』は過去の“不倫作品”とは違う選択肢を提示? 丁寧に描かれる女性のリアル

 やがて千秋の思わせぶりな態度は加速していくが、忍は、疑り深い。それは、普段から年齢によって「いい歳をして恥ずかしい」と言われたり、仕事をしながらでも家庭のことを完璧にできていない自分にうしろめたさを感じたりしてしまうことの多い女性だからこその表現かもしれない。実際、夫は「いい歳こいて」とか「母親なんだから」とか「男の浮気と女の浮気は違うんだよ」という言葉を投げかける。

 しかも、千秋には目的もあるから余計に疑り深くもなる。しかし、ときおり千秋が悲痛な叫びをあげることと、つらかったときに忍が描いた漫画が支えになったということが事実であるからこそ、忍は少しずつ千秋に惹かれていく。

 これまで……といっても私が思い浮かべるのは『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系)や『セカンドバージン』(NHK総合)や『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系)などだが、不倫をした女性は、なんだかんだ思いとどまって、自分の行動は一時の気の迷いだったんだと、元の生活に戻るか、もしくは映画まで進むと、どちらかが亡くなる(か亡くなったかのような)ラストがほとんどであった。

 それは、忍の夫が言うように「男の浮気と女の浮気は違う」とされている現実があるからだろう。

 しかし、現実にはその二択とも限らないことがほとんどだし、息苦しさを感じつつも、やっぱり自分さえ考えを改めれば周りも変わるはずと、壊れた家庭を修復して維持したほうがいいという物語が苦しい人も存在するのではないか。『シジュウカラ』を観ていると、これまでの二択ではない物語を期待してしまう。

■放送情報
ドラマ24『シジュウカラ』
テレビ東京系にて、毎週金曜深夜0:12〜放送
主演:山口紗弥加、板垣李光人、宮崎吐夢、入山法子、和田光沙、酒井若菜、池内博之
原作:坂井恵理『シジュウカラ』(『JOUR』(双葉社)連載中)
監督:大九明子、成瀬朋一、上田迅
脚本:開真理
オープニングテーマ:ロイ-RoE-「ニードル」(SDR)
エンディングテーマ:SpendyMily「後悔」
音楽:侘美秀俊
漫画監修・漫画協力:坂井恵理、ねこしみず美濃、鹿島麻耶
漫画協力(五十音順):イシデ電、おくやまゆか、おざわゆき、水都正枝、森泉岳土、安永知澄
チーフプロデューサー:祖父江里奈(テレビ東京)
プロデューサー:北川俊樹(テレビ東京)、高橋優子(ザ・ワークス)
制作:ザ・ワークス
製作著作「シジュウカラ」製作委員会
(c)「シジュウカラ」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/shijukara/
公式Twitter:@tx_shijukara

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