『逃亡医F』衝撃のラストで物語が動き出す? 桜庭ななみ演じる妙子の謎

 土曜夜の日テレドラマらしい、大胆で奇抜な展開を見せる『逃亡医F』(日本テレビ系)。第3話の患者は、聴神経腫瘍に侵されている、喫茶すずらんの店主・香川(升毅)。料理人の命である味覚を失うことを恐れ、治療を自己中断していた。けれど、娘・空見子(夏子)の結婚式で料理を作ることができたら、それが最後の料理になってもいいという。藤木(成田凌)と美香子(森七菜)は香川に頼まれ、10年前に離婚した元妻・晴枝(朝加真由美)のもとへ。味覚が乏しくなっている香川が料理を作るには、晴枝が持つレシピが必要だった。病気のことは明かさなかったものの、香川がレシピを必要とするにはわけがあると察した晴枝は、その晩喫茶すずらんをたずねてくる。

 空見子の式場を決めたのは晴枝だった。香川と修行をともにした仲間がシェフを務めるホテルならば、香川と似た味の料理を出すのではないか、と。レシピを渡して作ってもらえばいい、ついでに厨房にもぐりこんで一品作ればいい、そうして「親が子を思う強さ」をあなたからも教えてあげてほしいと、晴枝はレシピノートを香川に渡す。

 「ビンタさせて」と言いながらフェイントでスネを蹴る、豪快でたくましい晴枝。けれど「許してないけど憎んでない」という言葉、息の合った会話、年季の入ったレシピノートに、夫婦の歴史を感じた。

 結婚式当日。空見子が好きだったハンバーグを作っている最中に立つこともできなくなった香川は、殺人犯かもしれない「天才医師」に、どうにかしてくれと頼む。タイムリミットまでの10分、香川は力を振り絞り、リンゴの飾り切りで白鳥を作った。かつて娘に作った、思い出の一品だ。

<やっぱり器用に 生きられないね 似たような二人と 笑ってた>

 オペBGMは島倉千代子の「鳳仙花」。晴枝は、香川が切ったリンゴを空見子のもとに運ぶ。「披露宴で新婦だけリンゴを食べると一生、痔にならない」。どうにか香川が作ったものを食べてもらおうと、晴枝のへたな言い訳も二度目だ。

<いのちのかぎり 街の隅 わたしも咲きたい あなたと二人>

 そう締めくくられる同曲に、喫茶すずらんのやさしい灯りと、レシピノートに書き込まれていた「一生一緒に料理しよ」の文字が思い出された。

 救急隊ヘのメモを残し、立ち去ろうとする藤木に、病気が完治したら美味しいハンバーグをリベンジさせてくれと伝える香川。どうすれば信じてあげられるか、どうすれば信じてもらえるかーー分からないと正直に伝え合った2人が、また会う約束を交わすこと、それは「信じる」と簡単に口にする以上の信頼だ。そして、味覚を失うことを恐れ、生きることからも目を逸らそうとしていた香川はもういない。約束は、生きる意味になる。逃亡を続ける藤木にとっても、そうであるといい。

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