『カムカム』るいと錠一郎が歩むサニーサイド 第62話に散りばめられていた安子編の軌跡
『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第13週ラストに、るい(深津絵里)が錠一郎(オダギリジョー)との間に生まれた元気な女の子を出産した。ここでは一応名前は伏せておくが、彼女が川栄李奈が演じることになる三代目ヒロインであることは言うまでもない。
妊娠は回転焼き屋「大月」をほぼ一人で切り盛りする、るいが睡眠不足から倒れ医者に診てもらうことから判明する。印象的なのは、その時のるいと錠一郎の会話だ。
錠一郎「僕、お父さんになれるかな?」
るい「なれるよ。なってあげて。この子の大好きなお父さんに」
るい「なれるかな……お母さんに」
戦争孤児だった錠一郎は「Dippermouth Blues」のマスター定一(世良公則)を育ての親としているが、言ってしまえば本当の親の愛情を知らずに大人へと成長してきた。るいは雉真家から溺愛されながら手厚く育てられてきたが、母・安子(上白石萌音)からの疑念がすれ違いによって絶望に変わり、母親からの愛情にトラウマを持ったまま育っている。父・稔(松村北斗)も、るいが産まれた直後に戦死してしまっているため、父の優しさをるいは知らない。「なってあげて。この子の大好きなお父さんに」というセリフからは、そんなるいの生い立ちを含めた願いが感じられる。
これらのセリフをより引き立てているのが、自転車に乗れない錠一郎を後ろからアシストするるいとのシーン。立場は逆だが、よろよろと自転車を漕ぐ安子と錠一郎、それを後ろから押す稔とるい、岡山の旭川と京都の賀茂川とで安子編を彷彿とさせる場面が描かれている。