描きたかったのはノワール探偵物語 『THE BATMAN』マット・リーヴス監督が制作秘話語る
3月11日に劇場公開されるDC映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』の監督を務めたマット・リーヴスが制作秘話を明かした。
本作は、クリストファー・ノーラン監督による『ダークナイト』トリロジー以来となるバットマンの単独映画。知能犯リドラーが社会に蔓延した“嘘”を暴いていく物語で、最後の標的は、若き日の青年ブルース。彼の“嘘”が暴かれ、本性が狂気に変貌していく姿が描かれる。
ブルース・ウェインを演じるのは、『ハリー・ポッター』シリーズや『トワイライト』シリーズ、『TENET テネット』などのロバート・パティンソン。未熟で、善と悪の間で揺らぐ人間味あふれるバットマンに挑む。
本作以前にも、ティム・バートンやノーランといった監督によって映画化されてきた「バットマン」。その新章の幕開けとなる『THE BATMAN-ザ・バットマン-』について、リーヴス監督は「素晴らしい『バットマン』映画があるというプレッシャーで大変だった」と過去の作品に対する率直な思いを吐露する。だからこそ「なぜバットマンをつくるのか、についての明確な答えを見つけることが最も重要なことだった」と語る。その答えはバットマンの心理学的な側面を掘り下げることにあったという。
「彼の幼少期のトラウマやバットマンになるまでのオリジンのストーリー、バットマンとしてさらに磨きをかけ完成されたヒーローになるストーリーは既に見ていると感じた。僕たちがまだ見ていないのは、バットマンになっていく初期の頃における不完全なキャラクターとしての心理状態を見ることだった。バットマンになるというストーリーの代わりに、彼がまだその成長過程にあるというのが見たかったんだ。だから僕は、初期の頃の彼、バットマンになって2年目を描くことに決めたんだ」
加えて本作は、「ディテクティブ・コミックス(DC)」という名の通り、バットマン=探偵という原点に立ち返り、バットマンが探偵として事件を解決することにフォーカスしているが、その理由について、リーヴス監督は以下のように語る。
「僕は、自分のパーソナルなやり方を見つけられなければ映画を作ることができない。作品にとりかかるにあたって、とても深くコミックを読み込んだ。僕にとって魅力的だったのは、バットマンが、ボブ・ケインとビル・フィンガーのコミックスのトーンからそうであったように、ノワール探偵モノとして始まったことだった。バットマンは、腐敗した世界と戦ったり、悪戦苦闘する。主人公のキャラクターが犯罪を解決する道を進んで、ある意味、最終的にその事件に感情的に深く入りこんでしまうというストーリーは、古典的なノワールだよ。僕がとても惹かれたのは、そういった心理学や暗さを掘り下げる作品だった。ブルースが探偵であるという要素はこれまでの映画では描かれてこなかったから、僕は彼が『世界最高の探偵』であり、事件を解決するということに寄った作品を作りたいと思ったんだ」
ノワール探偵モノのストーリーを開発するにあたり、最も重要な作品となったのは、映画『チャイナタウン』(1974年)だったという。
「私立探偵のジェイク・ギテス(『チャイナタウン』の主人公)はちょっとひねくれたキャラクターだ。でも、そのどこかに、良心があるんだ。彼はどんどん深く入っていって、チャイナタウンがいかにダークな場所なのかということと向き合わないといけなくなる。そして最後には、彼はそこから脱出しようとしたにも関わらず、チャイナタウンに戻るんだよ。僕は、それはとても『バットマン』らしい物語だと思った。バットマンは犯罪や事件を追いかけ、不安を抱えながらも奥深いゴッサムシティの本質や歴史、過ちのある部分がいかに手に負えず取り返しのつかないものであるかを明らかにするんだ。ゴッサムは決して良くなるようには思えない。でも、彼はそれに立ち向かい続ける。なぜなら、彼自身にとって必要なことだから。彼はどこか壊れた人なんだよ」
さらにリーヴス監督は、「腐敗した世界と戦おうとする、不完全な世界で格闘する人に、惹きつけられるものがあった。それがバットマンの核となるものだと思う。ゴッサムは、僕たちの世界のメタファーだ。人々は、腐敗した世界の不正に立ち向かう方法を見つけようともがいている。なにが正しくて悪いかということと格闘し、人々は連携しようと努力するんだ。そういう意味で、この物語はタイムリーだよ。ゴッサムには、独自の歴史と特徴があるけど、とても今に通じる物語なんだ」と、本作を非現実的なヒーロー映画として終わらせず、現実社会と地続きの構造を持たせることにもつながったと語る。
■公開情報
『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
3月11日(金)劇場公開
監督:マット・リーヴス
脚本:マット・リーヴス、マットソン・トムリン
出演:ロバート・パティンソン、コリン・ファレル、ポール・ダノ、ゾーイ・クラヴィッツ、ジョン・タトゥーロ、アンディ・サーキス、ジェフリー・ライトほか
配給:ワーナー・ブラザース
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公式サイト:thebatman-movie.jp
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