『22年目の告白』の残酷なまでの冷静さ 藤原竜也×伊藤英明の狂気の演技に震える

 大切な存在を失った時の苦しみは、“ファントムペイン”に似ているらしい。手足を切断された患者が、失ったはずの部位に痛みを感じる。「痛い」「助けて」と救いを求めても、直しようがない。もう、その部位は存在しないから。2017年に公開された映画『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』は、この“ファントムペイン”がひとつのテーマになっている。

 本作は、藤原竜也と伊藤英明がW主演を務めたサスペンスストーリー。1月28日放送の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で地上波放送される。

 1995年に起きた連続絞殺事件が時効を迎えたあと、真犯人を名乗る男・曾根崎雅人(藤原竜也)が現れる。「はじめまして。私が、殺人犯です」と不敵な笑みを浮かべた彼は、告白本を出版。あっという間にベストセラーになり、“カリスマ”として人気を集めるように。当時、事件を担当していた刑事・牧村航(伊藤英明)は、その様子を悔しそうに見ていた。真犯人がこんなにも近くにいるのに、“時効”が邪魔をして逮捕することができないから。

 予告やあらすじを見るかぎりだと、刺激的なサスペンス作品という印象を受ける。サイコパスな主人公が、次々と予想だにしないことをやってのける。その様子を、ハラハラしながら観る作品なのだろうと思っていた。しかし、映画を観たあとは、作品に対するイメージが大きく変化することになる。自分がラクになるのなら、それでいい。たとえ、他の人が傷ついたとしても……と考える醜さを、残酷にかつ冷静に描いているのが、『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』なのだ。

 事件の映像や、SNSで拡散されていく様子などリアリティを追求している本作。映画のなかの世界観にグイグイ引き込まれるのは、この“リアル”さが影響しているのだと思う。メガホンを取った入江悠監督の細部までこだわった作品づくり。そして、役者陣の魂のぶつかり合いも、本作の見どころのひとつだ。

 曾根崎雅人という謎の男の奇妙さを、見事に表現していたのが藤原竜也。彼は、言うまでもなくカリスマ性を持っている俳優だ。だからこそ、熱狂的な支持を集めるキャラクターを演じていても、説得力がある。また、瞬きの回数を少なくしているからか、血が通っていない人形のような冷たさを感じさせた。この冷酷さが、後半とのギャップを生み出すことになる。

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