池田エライザが目指す理想の“大人像” 「ちょっとずつ感性をオフにしていく必要がある」

 10代・20代を中心に人気を集める作家Fの初小説を映画化した『真夜中乙女戦争』が1月21日より公開中だ。『チワワちゃん』『とんかつDJアゲ太郎』の二宮健が監督を務めた本作では、平凡で退屈な日々を送る青年“私”が自分自身と東京を破壊するまでの夜と恋と戦争が描かれる。

 そんな本作で、永瀬演じる主人公“私”が密かに想いを寄せる“先輩”を演じているのが池田エライザだ。数々の映画やドラマなどに出演しながら、2020年に『夏、至るころ』で監督デビューも果たした彼女に、監督と議論を重ねたという“先輩”の役作りや、最近考えていたという“大人になること”について、深く語ってもらった。

監督と議論を重ねて作り上げた“先輩”というキャラクター

ーー題材やテーマも含め、今回の『真夜中乙女戦争』はなかなか攻めた映画ですよね。

池田エライザ(以下、池田):私も最初に台本をいただいて、「結構ハードな作品がきたな……」と思いました。その後コロナ禍で延期になり、どんどん延びていく中で、監督がその時代に合わせて何度も脚本を書き直されて。その姿を見て、「私も絶対この作品に参加したい」という思いが強くなっていきました。

ーー最終的に台本は23稿までいったと聞きました。

池田:さっき思い出したのですが、一番最初の段階で監督とお話ししたときに、結構厳しめにお伝えしたと思うんです。「女性がまだ負けている気がする」と……いろいろ思い出してきました(笑)。

ーー具体的にどういうことでしょう?

池田:主に女性の描き方についてです。女性みんなが自分の愚かな部分を悔いているわけではないし、誇りに思っていいこともたくさんあると思うんです。消費されているように見えてしまうのがもったいないと感じたんですよね。たとえそういう意図がなくても、そういうところに思考を巡らせるのが私の仕事だとも思うので……。「もっともっといろんな方に手を差し伸べられる本にできるはず」というようなお話をしました。それ自体はすごくポジティブなやりとりで、シーンごとに「このセリフはこうしたらもっと配慮が行き届くと思う」というようなことを監督に伝えました。セリフはもちろん感情的な言語ではあるのですが、もっと受け取る側が広くなってもよいかなと思ったんですよね。

ーー最初の方は男性的な視点の描かれ方をしていたと。

池田:いや、そんなことはなくて……。なんと言いますか、最初は“先輩”がもうちょっとパリピっぽかったんです。それもある視点から見た事実なのだと思いますが、“先輩”はもっとたくさんの方を惹きつけるキャラクターだと感じたので、もっと丁寧に描いてもいいんじゃないかと。

ーーなるほど。

池田:『真夜中乙女戦争』を永瀬廉さん主演で作るということは、すごく間口が広がるんですよね。たくさんの方がすごくフラットな状態で映画を観にきてくださると思ったので、しっかりと向き合って、自分自身が感じたことをお伝えしました。「私だったらこのセリフでこういう方々を救いたい」と。そういう話し合いをしながらも、並行してコロナ禍になり、映画自体が延期になって……。その間に脚本がどんどん素敵になっていったので、その過程を目の当たりにしながら「すごい映画になってきた!」という感覚になっていきました。

ーー監督とそのような議論を重ねることは結構あるんですか?

池田:言わないときは何も言わないのですが、今回は監督がそうしてほしいという姿勢だったので、じっくりお話しました。監督から直々に「考えを聞かせてほしい」とおしゃっていただいたのですが、それはすごく新鮮でしたし、嬉しかったです。変化することの覚悟があって素敵だなと思いました。

ーーそのやりとりは素敵ですし、映画もより良いものになっていきそうですね。

池田:そうですね。監督に合わせて我々が変化するんじゃなくて、変化していく監督のサーブを打ち返せるように、こちらも思考を張り巡らせていく感じでした。監督から「これはどういうつもりでお芝居しているの?」って尋ねられたときに、瞬発力を持って素直に応えられるように役に向き合うという。監督の姿勢にすごく引っ張っていただきました。

ーーこれまでいろんな方と映画を作られていると思いますが、その中でも二宮監督は珍しいタイプだったんですか?

池田:映画好きの監督にはたくさん出会いましたし、撮ること自体を楽しんでいる方もたくさんいらっしゃいますが、二宮監督の楽しみ方は本当に異常です(笑)。ものすごくエンジョイしてるんですよね。なので、このシーンは精神的にグッと頑張って乗り越えようというときも、監督が嬉しそうにニヤニヤしながら「いや~いい芝居撮れたな~、嬉しいな~」という雰囲気を出してるので(笑)、こちらも「あ~よかった!」って思えるんですよね。

ーーそれはやりがいがありますね。

池田:やりがいがありますし、本当にいいときは背中をポンっと叩いて、「本当にありがとう」みたいなことをおしゃってくださるので、それもすごくよかったです。年齢的にもまだお若い方なので、だからこそ柔軟で、豊かなんだと思います。

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