佐々木希が放つ別種の美しさ 『カムカム』奈々はるいの"あったかもしれない未来"?

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第12週の前半では、るい(深津絵里)と錠一郎(オダギリジョー)がついに婚約を果たした。トランペットのコンテストで優勝した錠一郎のメジャーデビューも決まり幸せムード全開だったが、そんな時にこそ容赦ない展開で視聴者を裏切るのが藤本有紀の脚本。すでにある人物の登場で不穏な空気が流れ始めている。その人物とは、今週から物語に参戦した佐々木希演じる笹川奈々だ。

 奈々は錠一郎が出場したコンテストを主催する大手音楽事務所「笹川プロダクション(通称、ササプロ)」の社長令嬢。関西に眠る逸材を探すため、父・光臣(佐川満男)と一緒にジャズ喫茶「Night & Day」にやってきた。如何にも“業界人”という感じの光臣と並んでも違和感がないほど、奈々は都会的で美しく、洗練された雰囲気を醸し出している。

 るいと奈々、どちらも良家の娘という共通点はあれど、2人はかなり対極的だ。それがコンテストでのシーンで印象深く描かれており、優勝した錠一郎に上品で華やかなファッションに身を包んだ奈々は真正面から「おめでとうございます」と花束を渡し、洗濯したシャツをいち早く錠一郎に渡すため、仕事着で駆けつけたるいは遠目から彼の健闘を讃えた。るいと奈々が取る行動の違いは、おそらく“自己肯定感”の高さが関係している。

 奈々の言動の一つひとつは、幼い頃からとびきり愛されて育ってきたことを確信させるものだ。特に優勝者を予想する父親に放った「でも関西での話でしょ? 東京でも通用するのかなあ」という言葉やいたずらな笑顔は、彼女の自分の音楽センスに対する絶対的な自信を覗かせた。でもそれを鼻にかける様子は一切なく、不思議と嫌味もない。

 またもう一つ印象的な場面があった。それは3カ月におよぶレコーディングのため、その間笹川社長の自宅に寝泊まりすることになった錠一郎と再会した時のこと。光臣は錠一郎に「どうせやることもなくぶらぶらしてる娘ですから」と奈々を紹介するのだが、当の本人は軽く「もうレコーディング付き合ってあげないわよ」とあしらうのだ。

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