『カムカムエヴリバディ』深津絵里の年齢を感じさせない演技を分析 演出の力も体感

 NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』では10代から演じながらも実年齢とのギャップを感じさせない魅力を見せる深津絵里。以前は『踊る大捜査線』(フジテレビ系)などの人気シリーズでヒロイン的役割を務めてきたが、こうしてヒロインとしてテレビで深津の姿を見られるというのも久しぶりの印象だ。改めて『カムカムエヴリバディ』を通して、1クールでキャラクターの生涯を描くことが多い朝ドラにおいて重要な役の年齢設定とマッチした演技がどういうものなのかを掘り下げてみたい。

 現在49歳の深津が18歳のるいを演じることが大きな話題となっていた『カムカムエヴリバディ』だが、視聴者にとっては、違和感なく物語の世界に溶け込んでいると感じる人が多いのではないだろうか。

 若い頃はショートカットのボーイッシュなイメージで、JR東海のクリスマス・エクスプレスのCMに15歳で出演。1997年のドラマ『踊る大捜査線』の恩田すみれ役が当たり役となり、今も深津のイメージがすみれという人も多いだろう。明るく、正義感溢れ、相手がどんな立場だろうと媚びない強さを持った刑事を見事に演じた。このときからすでにナチュラルな演技力もあった深津。連続ドラマ版当時24歳にもかかわらず、もはやベテラン刑事のような頼れる落ち着きを見せていて、この作品でも年齢を感じさせない存在感があったように思う。

 以降も映画『ザ・マジックアワー』や『ステキな金縛り』など、深津の少女性が強調されたコメディ作品が増えたり、2014年の映画『寄生獣』では、原作だと24歳の新任教師を演じるも、変わらぬ透明感で違和感なく作品に溶け込んでいたりと、今回の『カムカム』に限らず、深津はもともとずっと年齢を感じさせない女優の1人だった。

 もちろんそれができるのは深津の演技力があってこそ。『踊る大捜査線』がまだ印象に残っている人なら、深津=しっかり者というイメージが強くあると思うが、るいは声を張らず、日本昔ばなしのようなおっとりとした口調と少し高めの声で、心の中で色々とつっこんでいくという緩さの演出が、幼さや初々しさを強調している。

 また、大月錠一郎(オダギリジョー)と話すときの意識した目線の逸らし方、周りの出来事についていけないときの表情、場違いかもしれないと、肩をすぼめて体を小さくして座ったり、とにかく一歩引いて申し訳なさそうにする姿勢を見せたりと、事細やかな仕草が10代らしく見えることにつながっているのだ。また、上白石萌音演じる母・安子の10代のときを彷彿とさせるのも、ひとえに深津の演技力の賜物であると言える。

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