『ぎぼむす』SPが2022年に届けた“小さな奇跡” 楽しみになる“また明日”を祈って

 もしかしたら、亜希子となら手放してしまった“もしも”の未来を取り戻すように生き直せるかもしれない。そんな小さな奇跡とも呼べる日々が待っているはずだった。だが、自分自身に変わることなんて無理だという呪い「面倒くさ」から、岩城は抜け出すことができなかった。

 しかし、それはこのドラマを観る多くの視聴者も痛感するところかもしれない。人間はそう簡単に変わることはできない。今いる環境が安定しているほど、持っているものを手放したくないほど、変わることがリスクとなる。だからこそ、私たちにとっても恐れることなく誰かを信じ、突き進んでいく亜希子や麦田、みゆきたちを愛しく思うのだろう。

 麦田をなかば騙す形で強引に進めた岩城の買収計画。それに対して亜希子はベーカリー麦田のメンバーはもちろん、白百合製パンの従業員とも団結してストライキを実施。岩城たちファンドに一矢報いたのだ。かつて年末の風物詩でもあった「討ち入り」を描いたドラマが近年なかなか放送されなくなったが、まさか『ぎぼむす』で見られるとは思わなかった。

 今日も明日も好きなパンを作り続ける。それもまた小さな奇跡。そんな何気ない幸せを守るのは他ならぬ自分たち自身であり、理不尽に奪われそうになったときには立ち上がる必要があるのだと見せてくれた。

 混乱を極めた昨今、強い流れに打ちひしがれそうになる瞬間がある。どうせ何も変わりはしない、と諦めてしまうことに慣れてしまっている部分もあるかもしれない。だが、大きなミラクルを起こすのは難しかったとしても、小さな奇跡に意識を向けることができたら「あんなことがあったけどよかった」と少しでも思うことができれば明日はまた変わってくる。

 良一が死をきっかけに亜希子とみゆきを引き合わせることができたように。みゆきがその悲しみを経て「お母さん」と呼べる人と出会えたように。岩城が討ち入りの果てに生き直せたように。麦田がすべてを失いかけて社長気分よりもパン作りが好きだと自覚できたように。そして、多くの壁に直面しながら、気づけば亜希子の周りにはファミリーとも言える多くの人が集まっているように……。

 2022年、まだまだ不安の多いブルースな日々だが、そんな今こそ『ぎぼむす』が教えてくれた小さな奇跡探しをしようではないか。そして、今日を生きて良かった、明日も生きたいと願える毎日になることを心から祈っている。

■配信情報
『義母と娘のブルース 2022年謹賀新年スペシャル』
TVer、Paraviにて配信中
出演者:綾瀬はるか、竹野内豊、佐藤健、上白石萌歌、井之脇海、吉川愛、小林隆、武田鉄矢、福澤朗、馬場徹、川田裕美、山本未來、宇梶剛士、浅野和之、麻生祐未
原作:桜沢鈴『義母と娘のブルース』(ぶんか社刊)
脚本:森下佳子
演出:平川雄一朗
プロデュース:飯田和孝、中井芳彦、大形美佑葵
音楽:高見優、信澤宣明
主題歌:MISIA「アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)」(アリオラジャパン)
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gibomusu_blues/
公式Twitter:@gibomusu__tbs

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