三浦春馬さんが遺した作品と演技 『ブレイブ』『太陽の子』未来に繋ぐべき功績を振り返る

 そして、夏に公開されたのが『映画 太陽の子』。これは2020年夏に放送された、国際共同制作特集ドラマ『太陽の子』(NHK総合)の劇場版で、太平洋戦争下における“日本の原爆開発”を物語の軸とし、激動の時代に翻弄されながら生きる若者たちの姿を描いたもの。主演の柳楽優弥が原爆開発に没頭する若き研究者・修に扮し、建物疎開によって家を失いながらも未来を見据えることをやめない幼なじみ・世津役に有村架純が、そして三浦さんは、修の弟で、肺の療養のため一時帰郷した陸軍の士官・裕之を演じた。

 本作はこの三者の“青春”を描いたものでもあるが、やはり観ていて非常に苦しい映画だった。特に、三浦さんが時おり浮かべる悲痛な表情には、胸に痛みを感じないわけにはいかなかった。久しぶりに再会した家族や世津の前では明るく振る舞うのだが、どうにも無理をしているようにも感じる。彼は前線での壮絶な戦いが脳裏から離れることがなく、常に苦しんでいたのだ。激動の時代において3人はそれぞれ立場が異なり、裕之の本音はなかなか掴めないものだったが、三浦さんはそれらしいセリフに頼らずに、ここに裕之の本音を垣間見せていたように思う。

『映画 太陽の子』(c)ELEVEN ARTS Studios / 「太陽の⼦」フィルムパートナーズ

 『天外者』『ブレイブ -群青戦記-』『太陽の子』には、“現代劇ではない”ということのほかに、一つの共通点がある。それは、未来に、次代に、後世に、想いをつなぎ、メッセージを投げかけている点だ。私たちはこれらの作品から何を感じ、何を語らねばならないのか。三浦春馬さんの演技は若くして、すでに名人の域に達していたと思う。この2021年だけでなく、これからもずっと、私たちの心に残り続ける。そう確信させる作品と演技を、彼は遺したのだ。

■リリース情報
『映画 太陽の子』
2022年1月7日(金)Blu-ray&DVD発売
出演:柳楽優弥、有村架純、三浦春馬、イッセー尾形、山本晋也、ピーター・ストーメア、三浦誠己、宇野祥平、尾上寛之、渡辺大知、葉山奨之、奥野瑛太、土居志央梨、國村隼、田中裕子
脚本・監督:黒崎博
音楽:ニコ・ミューリー
制作:KOMODO PRODUCTIONS
Presented by ELEVEN ARTS STUDIOS / NHK
発売元:株式会社ハピネットファントム・スタジオ
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
(c)ELEVEN ARTS Studios / 「太陽の⼦」フィルムパートナーズ

関連記事