有村架純「演じるときには普通の人でありたい」 『前科者』などWOWOW出演作を語る

短い時間の中でどれだけ相手と心をつなげられるか

――そして、2021年から2022年にかけて『前科者』のドラマと映画というプロジェクトが始まります。“前科者”たちの更生、社会復帰をサポートする保護司の活動を描いた作品ですね。

有村:保護司というのは、無給の国家公務員。つまりボランティアなんです。そのことを知っていただきたいですし、若い世代も勇気を持って取り組める役割であることを伝えられたらなと思います。ドラマ版も映画版も、それぞれのキャラクターの成長模様が描かれていて、重たい部分もありますが、岸善幸監督が手掛けたからこそエンターテインメント性のある作品に仕上がったと感じています。そういった意味ではすごく観やすい作品ですし、社会の不条理さや生きにくさを丁寧に描いているため、「生き方」を改めて感じられるとも思います。

――「罪と向き合う」という部分においても、「生き方」を見つめ直す機会になりますね。

有村:犯罪を起こさないまでも、人は絶対に道を踏み外す生き物だと思います。例えば友達にすごく嫌なことを言ってしまったり、そういった小さなことでもやっぱりずっと正しい道は歩けない。その時にどれだけ周りの人は優しい心を持って応援できるかが大切なのかなと感じました。本人は道を正すために一生懸命生きているのだとすれば、その背中を押せる環境が増えたらいいなと、作品に取り組みながら感じていました。この作品に参加するにあたって様々なドキュメンタリーや資料を拝見したときに、罪を犯してしまった人もかつて被害者だったことも多いと知り、その負の連鎖は誰にも止められなかったのか? と感じました。きっと、その人たちの奥底を知ることで見方も変わるのだろうと思います。

『WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-』(c)香川まさひと・月島冬二/小学館(c)2021「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」製作委員会

――岸善幸監督と脚本の港岳彦さん、音楽の岩代太郎さん、制作プロダクションのテレビマンユニオンなど、『あゝ、荒野』のチームと有村さんが今回タッグ。今回のメンバーとのお仕事はいかがでしたか?

有村:皆さんの作品に対する矢印の向き方が、強くありました。スタッフさんも役者陣に寄り添ってくれるし、スタッフ同士でももちろんそう。みんながみんなをリスペクトし合えていた現場でしたね。現場の空気から「良い作品にするんだ」という信念を感じられて、身を置けて幸せでした。信じてもらえている実感があったので頑張ろうと思えましたし、楽しかったです。

――有村さんが演じられた佳代の静と動のギャップが、印象的でした。体力・気力を使うシーンも多くあったかと思いますが、1人の役の中でのグラデーションはどう生み出していったのでしょう?

有村:佳代は大人しいだけの人ではなく、かといって際立って華やかな人でも暗いということでもなく、その配分はすごく難しかったです。怒りの沸点が人とはちょっと違うんですよね。彼女の場合、一生懸命さがそういう方向に向かってしまうだけではあるのですが、自分の日常生活でもあそこまで怒りを露わにすることはないですし、どう持っていこうかは悩みました。ただ、とにかく現場で100%でやってみるのが一番いいかなと思いました。あんまり「こうしよう、ああしよう」と意図的なところになってしまうと、違うと感じたんです。佳代の中の“衝動”を大切に持つようにして、その衝動が大きな炎になるのか、或いは青い炎になるのか、現場で役者の方とやり取りしながら動く気持ちを素直に感じつつ演じていました。

『WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-』(c)香川まさひと・月島冬二/小学館(c)2021「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」製作委員会

――石橋静河さん演じる保護観察対象者のみどりとの掛け合いも、生っぽさがあって印象に残りました。

有村:佳代にとっては、みどりさんは初めての保護観察対象者であり、「お互い全く違うタイプだけど、傷は似ている」と感じながら自然と歩み寄っていきます。私自身も、みどりさんに対しては他の登場人物とはまたちょっと違う一歩踏み込んだ感覚があって、友情のようにお互いが支え合っている部分もありますし、不思議な関係性だと感じました。演じながら、「とにかくみどりさんが傷つくのが、本当に嫌だ」という想いがずっとありました。だから怒るし、行動するというような、佳代の感情の起因になる人でもありましたね。なかなか言葉ではうまく説明できないものが生まれてきました。ここまで人を想って泣いたり笑ったり叫んだり怒ったり、こんなに他者に気持ちを動かされる役柄に臨んだのは初めてでした。今までは自分に矢印を向けて、自分の中で沸々と煮立たせたものを引き算で出していくことで芝居をする場合も多かったのですが、アプローチの仕方が今までと違うなという特別感がありました。

――本作のテーマにも通じる、人と人の“つながり”を感じさせるエピソードですね。

有村:いまも現場に入っているのですが、どれだけ短い時間の中で相手を信頼して心をつなげられるかは、私が演じるうえですごく重要視しているものです。目に見えない呼吸を合わせられたり、同じ歩幅で歩いて行けることが、良い作品を作るためにまず必要。「自分ひとりで芝居はできない」というのが、いままでの経験を経て学んだことの一つです。

――最後に改めて、本作を経て得たものを教えてください。

有村:『前科者』は私にとって、改めてお芝居が好きだなと思わせていただいた作品です。それは皆さんとの出会いもそうですし、そういった想いが更新されていくことが自分にとって幸せです。また、そう思わせてもらえる出会いがまだまだ先にもあるんだな、と感じられて、自分にとってお芝居に向かうモチベーションが上がるきっかけになりました。

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■放送・配信情報
『WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-』
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(c)香川まさひと・月島冬二/小学館
(c)2021「WOWOWオリジナルドラマ 前科者 -新米保護司・阿川佳代-」製作委員会
配信ページ:https://wod.wowow.co.jp/program/171621

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■公開情報
映画『前科者』
2022年1月28日(金)全国公開
原作:香川まさひと・月島冬二『前科者』(小学館『ビッグコミックオリジナル』連載)
監督・脚本・編集:岸善幸
音楽:岩代太郎
出演:有村架純、磯村勇斗、若葉竜也、マキタスポーツ、石橋静河、北村有起哉、宇野祥平、リリー・フランキー、木村多江、森田剛
(c)2021香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会
公式サイト:https://zenkamono-movie.jp/

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