『恋です!』ユキコ×森生のこれまでを辿る なぜ2人の恋愛は愛おしいのか

 ユキコ(杉咲花)と森生(杉野遥亮)のただただ愛らしい2人の姿をずっとずっと見られるものだと思っていたのに……この愛おしい2人の日常が続いていくのだと疑わなかったのに……。最終話目前にしてそんな2人の雲行きが怪しくなり、別れ話まで出てしまった『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系)。

 弱視で「見えにくさ」を抱えた盲学校生ユキコと、喧嘩っ早いが根は純粋すぎるヤンキー・森生の運命的な出会いによって、2人の世界が周囲も巻き込んでどんどん色鮮やかに優しいものに一変していくさまを目の当たりにする度、もう何度涙させられたかわからぬほどだ。

 顔のキズなど目に見えるところばかりで判断され誤解されては社会からつまはじきにされ続けてきた森生は、自分が散々受けてきた勝手なカテゴライズ、一方的なラベリングへの反発もあってか、ユキコのことを“視覚障害者”という一側面だけを切り取りはなから決めつけるようなことは決してしない。「こんなことできっこない」「あれは危ないから無理だ」など、本人の可能性を狭めるようなことはせず、そもそも“目が見える/見えない”で分け隔てることもない。常に相手を“助ける対象”として眼差すわけでもなく、必要な時にはさっと手を差し伸ばす。だってユキコのことが好きだから、ただただ一緒にいたいから。もっと相手のことが知りたいから。理由は至ってシンプルで、それだけだ。

 全くの先入観も偏見もなくただただ一人の人間として、女性として、恋する相手として接する森生によってユキコは新しい自分を発見し、新たな世界の扉を軽やかに開いていくのだ。

 森生が当たり前の“既成事実”かのようにこぼした「だって、ユキコさんは普通の世界で生きてるじゃないすか」には、ユキコも目から鱗が落ちる思いがしたことだろう。あの瞬間確実に自分を取り巻く世界が一気に変わるのを感じたのだろう。どうしたって“守られる側”とされ一方的なコミュニケーションになりがちな窮屈さを感じていながらも、他の誰でもない自分自身が心のどこかで「目が見える人の世界=普通」と決めつけ、知らぬ間に勝手に設けてしまっていた制限や限界を実感させられたことだろう。そしてきっとユキコは一気に「森生から見た世界」「森生の目に映っている世界」を覗いてみたいと興味が湧いたのではないだろうか。「相手の目を通して見える世界」を知りたいと思うことこそ、「相手と同じ世界を見てみたい」と望むことこそ、相互理解の第一歩であり、正にそれを“恋の始まり”と呼ぶのだろう。

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