『最愛』に奥行きをもたらす宇多田ヒカル「君に夢中」 新井P×塚原D作品の主題歌力
『最愛』を手がける、新井順子プロデューサーと演出・塚原あゆ子。このタッグによる音楽の扱い方には、いつも舌を巻く。『最愛』以前の過去作品にも、主題歌がドラマに奥行きを与えるという巧妙なコラボレーションがいくつもあった。
代表的な例は、2018年に放送された『アンナチュラル』(TBS系)。不自然な死の真相を究明する「UDIラボ」を舞台とする、法医学ミステリー。死に隠された「裏側」が、社会への鋭い視線とともに、ヒューマンドラマのタッチで描かれた。
1話ごとに怒涛の伏線回収が行われ、真相がすべて明らかにされたクライマックスの瞬間に、米津玄師の主題歌「Lemon」が流れる。イントロなしで歌われる<夢ならばどれほどよかったでしょう>。これは、登場人物のミコト(石原さとみ)や中堂(井浦新)、大切な人の悲しい死に直面した周囲の人間、そして真相を目の当たりにしてやるせない思いを抱えた視聴者の思いそのものだった。「Lemon」は、物語に寄り添う代弁者として機能した。
2020年放送の『MIU404』(TBS系)では、同じく米津玄師の「感電」。イントロの印象的なホーンセクションや音楽の推進力は、伊吹(綾野剛)&志摩(星野源)ペアにあるグルーヴ感とマッチしていた。
さらに2021年放送の『着飾る恋には理由があって』(TBS系)では、主題歌の星野源「不思議」を2回流すという、通称「追い源」が施された。登場人物の心情や状況を示唆するための粋な工夫だった。
そして、未だに明かされていない謎が残された『最愛』。それぞれの「最愛」は、いかに登場人物を動かし、物語を誘導していくのか。宇多田ヒカルの「君に夢中」とともに、見届けていきたい。
■放送情報
金曜ドラマ『最愛』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:吉高由里子、松下洸平、田中みな実、佐久間由衣、高橋文哉、奥野瑛太、岡山天音、薬師丸ひろ子(特別出演)、光石研、酒向芳、津田健次郎、及川光博、井浦新
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子
編成:中西真央、東仲恵吾
主題歌:宇多田ヒカル「君に夢中」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS