『あなたに似た人』ついに記憶を取り戻したウジェ 愛が破綻した四角関係が向かう先とは

 もう何が起きてもおかしくないーー。Netflixで配信中の韓国ドラマ『あなたに似た人』は、チョン・ヒジュ(コ・ヒョンジョン)に人生を奪われたク・へウォン(シン・ヒョンビン)が復讐するストーリーのはずだった。ところが残り2話となった今、へウォンの夫でありヒジュとも深い関係にあったソ・ウジェ(キム・ジェヨン)が失っていた記憶を取り戻し、復讐を始める事態となっている。目的は一つ、“奪われたものを取り返すため”だ。

 アイルランドから戻ってきたウジェは全く別人のようだった。しかし、過去が明かされていくと彼は変わってしまったのではなく、変わっていなかったことがわかる。ヒジュに突然捨てられ、ヒジュの夫アン・ヒョンソン(チェ・ウォニョン)が起こした事故により5年の歳月を奪われてしまったウジェ。「結婚生活は続けて、恋愛は俺としよう」とヒジュに言い寄る姿をみると、事故がなかったとしてもヒジュとの関係を諦めようとはしなかったはずだ。ここにきて、ウジェの制御できないヒジュへの執着心が凄まじい迫力となり、最終章に向かって緊張感を一気に高めている。何をしでかすかわからないウジェの言動ひとつひとつに怯えているのは、それがヒジュとヒョンソンだけでなく娘のアン・リサ(キム・スアン)まで及んでいるからだ。リサはずっと前からヒジュとウジェの関係を知ってしまったせいで、ヒジュが家族を捨ててしまわないか精神不安定になっていた。しかも、ウジェがリサに紹介した小説『嵐が丘』はウジェの物語とも言える内容で、これからリサの家庭を壊すことを予告しているようなものである。へウォンがホスに手を出してしまった時のように、ウジェもまたヒジュを奪い返すために手段をいとわない。

 一方、へウォンは前話から心情の変化が読み取れる場面が増えていた。ヒジュの息子アン・ホス(キム・ドンハ)に絵本を読んでいる際に涙を流してしまったへウォン。「悲しい気持ちがわかる」と涙を拭ってくれたホスに「ごめん。本当にごめんね」と言って抱きしめたのは、幼いホスを標的にしてしまったことへの罪悪感と後悔からだろう。動画を撮らせて利用していた元生徒のイ・ジュヨン(シン・ヘジ)に対しても、「他人を憎んで人生を無駄にしてはいけない」と諭す。客観的に自分を見つめることができるのは、気持ちが落ち着いてきた現れでもある。

 ただ、へウォンが正気が戻ったのは束の間のことであり、彼女を復讐相手の二人が刺激する。ヒジュの攻撃により再度職場をクビになり、ウジェはまたへウォンを裏切った。まるで、破滅に向えば破滅側から迎えがくるように、二人に関わる限りへウォン地獄から抜け出すことはできないのだ。そもそも、二人はへウォンに心から謝罪したことが一度もない。それがへウォンの“許さない復讐”に繋がった大きな要因でもある。謝罪の一言で許せるようなことではないけれど、ヒジュの弟チョン・ソヌ(シン・ドンウク)のように「自分勝手だった。ごめん」と謝ることができたら、事態はこれほどまでにはなっていなかっただろう。やはり、ソヌは今のへウォンを救い出せる存在となり得るのではないだろうか。

 そんなへウォンが唯一気持ちを理解できる人物といえば、ヒョンソンだ。お互いに“裏切られた者”という共通点がある。理解できるからこそヒョンソンに向かって「本当に愛しているなら簡単に許すことはできないのに哀れだ」「いつかはヒジュもヒョンソンから逃げ出してしまう」と、いつも痛いところを突く。それでも、へウォンの言う“見えない苦しみをわかってもらえない辛さ”を分かち合えるのはヒョンソンしかいないのだ。

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