城田優の語りが朝ドラに新風を吹き込む 『カムカムエヴリバディ』を爽やかにリード
朝の陽光とともに、テレビから流れる音楽の旋律のような英語が印象的な『カムカムエヴリバディ』。NHK朝の連続テレビ小説の第105作目となる本作は、ラジオ英語講座を聴くヒロインの姿をみずみずしく描く。この『カムカムエヴリバディ』で注目したいのは、ヒロインやヒロインを取り巻く家族の姿だけではない。朝ドラといえば、やはり“語り”の「声」もまた、楽しみのひとつとなるだろう。
記念すべき朝ドラ100作目の『なつぞら』では、内村光良が暖かく包み込むような声でヒロインの奥原なつ(広瀬すず)を見守った。『エール』では、現在『最愛』(TBS系)でも警視庁捜査第一係長の山尾敦役で活躍する声優兼俳優の津田健次郎が語りを担当。『おちょやん』の軽快なテンポが魅力の語りは、黒衣役でも登場した落語家の桂吉弥だ。それぞれの作品が、それぞれのカラーを強く打ち出した方法で語りを入れることで、朝ドラはさらに深みを増し、15分という短尺ドラマでありながら視聴者がしっかり感情移入できるように導いてくれる。本作ではその語りを城田優が担当。澄み渡るような美しい声と、流れるような英語のリズムに心弾む朝を迎えられる。
城田といえば、やはり舞台やドラマでの活躍が印象に強いだろう。ミュージカル『テニスの王子様』の手塚国光役で注目を集め、その後はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』や『ファントム』などに出演。テレビドラマでは『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(フジテレビ系)や『ROOKIES』(TBS系)などで活躍し、放送終了したばかりの『古見さんは、コミュ症です。』(NHK総合)にも出演している。WOWOWの連続ドラマW『バイバイ、ブラックバード』では女性の姿でヒロインにも挑戦するなど、幅広い役をこなせる実力者だ。
城田の魅力は芝居の力だけではない。幼少期をスペインで過ごしていた経験からスペイン語が堪能、ミュージカルカバーアルバム『a singer』ではスペイン語の歌も披露している。2022年1月14日公開予定の『コンフィデンスマンJP 英雄編』では、スペイン人のマフィア役として日本語を一切使わずに全編スペイン語・英語のみの役に挑戦していることも明かされている。こうした経歴からも、城田の朝ドラでの光るナレーションには納得がいく。初週から始まった主人公の恋が、日々大きく進展するドラマチックな本作に、城田の落ち着きのある優しい声はよくマッチしているのだ。さらに「ラジオ」がキーアイテムになる本作で、まさにラジオDJを連想させるよく通る声質は作品のイメージにうってつけだろう。作品のラストに数多く挿入される語りの英語の部分では、ラジオ英語講座を聞いているかのような新鮮な気持ちになりながら、作品のハイライトを噛みしめることができる。城田は独学で身につけたという英語を武器に、安子の「英語は音楽のよう」という言葉を体現する美しい旋律で作品をリードする。こうした城田の強みがふんだんに活かされた語りは、朝の爽やかな風のように自然と我々の生活の中に吹き込むのだ。
自分が前に出て物語を動かすことはないものの、実は視聴者が迷子にならないようにしっかり“手を繋いで”作品の最後まで案内してくれる“語り”は、朝ドラになくてはならない存在だ。そしてその場所にてしっかりと自らの個性を光らせる城田だからこそ、『カムカムエヴリバディ』の世界観に溶け込む美しい語りを聞かせることができるのだろう。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK