市川実和子、松村沙友理、徳永えり 『ずっと独身でいるつもり?』で進み続ける女性たち
松村沙友理が真正面から向き合った若さを失うことへの恐怖
乃木坂46を卒業したばかりの松村沙友理は、パパ活女子として生計を立てつつも、若さを失うことに怯える美穂を演じた。美穂はSNSを更新したり、パパ活に精を出す姿は可愛らしい一方で、他のパパ活女子や関係を断つことを切り出したパパに対してはかなり口汚く悪態をつく。松村の演技はまだまだ荒削りな部分もあるように感じるが、美穂のキャラクター像には確かに呼応しているし、何より松村の演技からは、美穂の貪欲さと若さを失うことへの恐怖をひしひしと感じる。
ブランドものとごみに溢れた美穂の部屋とキラキラした体験を求める美穂は、刹那的で美しく見える。一方で、体の関係という一線を越えようとして思いとどまり、街中で人目もはばからずに泣く美穂の姿も人間味に溢れて美しかった。松村の本気の泣き姿は、心に残るものがある。
「結婚」の覚悟と重みを知る筒井真理子
最後に言及したいのは筒井真理子が演じたまみの母・恭子。恋人の公平(稲葉友)と結婚すると話すまみだが、その胸中にはまだ踏ん切りがつかない部分がある。恭子はそれを見抜いていたのか、結婚を喜ぶ親族の前で笑顔を見せるまみに何か言いたげな目線を向ける。
「本当にあなたが大切にしたいことは何?」と恭子は聞く。まみはすぐには答えられなかった。そんなまみに恭子が伝えた言葉は「結婚しても1人で生きていく覚悟がないとダメ」。まみと2人で話していると、まみの父親がやってくる。その途端、恭子の空気が変わる。まみの父親は、家庭内で威張りちらすほど亭主関白ではないと思いたいが、家事全般は恭子の役目と言わんばかりだ。筒井の台詞回しの変化で、母と娘、夫と妻、関係によって恭子の立場が変わってしまうことが分かる。夫がその場を立ち去った後、恭子はまみに「お母さんみたいにまみはなっちゃダメなんよ」と言った。その心なしか弱々しい声色に心が締め付けられる。
主人公・まみを含め、登場する女性たちは皆、自分なりに自分が求める幸せへの答えを導きだし、前へと踏み出す。筒井が演じた恭子もまた、娘に自分の思いをきちんと伝えた点で前へ進んだといえるはずだ。
本作のイントロダクションには“無傷では生きられない現代の女性へ贈る”とある。確かに彼女たちは無傷ではいられなかった。だが彼女たちは、傷ついてもなお生き抜こうと進み続ける。その一人一人の姿勢は、同じように無傷では生きられない私たちの背中をそっと押してくれるはずだ。
■公開情報
『ずっと独身でいるつもり?』
全国公開中
主演:田中みな実、市川実和子、松村沙友理、徳永えり、稲葉友、松澤匠、山口紗弥加、藤井隆、橋爪淳、筒井真理子
原作:おかざき真里(原案:雨宮まみ)『ずっと独身でいるつもり?』(祥伝社フィールコミックス)
監督:ふくだももこ
脚本:坪田文
音楽:池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)
主題歌:にしな「debbie」(WARNER MUSIC JAPAN)
制作プロダクション: ダブ
企画・配給:日活
(c)2021 日活
公式サイト:https://zuddoku-movie.com
公式Twitter:https://twitter.com/zuddokumovie
公式Instagram:https://www.instagram.com/zuddokumovie