『彼女の私生活』が他のラブコメ作品と一線を画す理由 “オタク”の姿を通じて描く特異さ

 韓国ドラマ『彼女の私生活』が9月よりNetflixにて配信開始されている。『キム秘書はいったい、なぜ?』にてコメディエンヌとしての才を発揮しているパク・ミニョンと、『コーヒープリンス1号店』『ボイス~112の軌跡~』などの出演で日本でも人気の高いキム・ジェウクが主演を務めた本作なのだが、他のラブコメ作品と一線を画すのはヒロインの“とある”特徴だ。

 美術館のベテランキュレーターとして周囲から尊敬のまなざしを集めるドクミ(パク・ミニョン)。しかし彼女は、アイドルオタクであることをひた隠しにしていた。職場では完璧な仕事をこなし、“私生活”ではボーイズグループ・ホワイトオーシャンのメンバー、チャ・シアンに愛を捧げる日々。

 そんなある日、ドクミの美術館に新たな館長・ライアン(キム・ジェウク)が就任する。やがて、ひょんなことから最愛のシアンをスキャンダルから守るためライアンとの偽造恋愛を始めたドクミは、だんだんと自分の中に育っていく恋心に気づいていく。

 2019年に韓国のテレビチャンネルtvNにて放送された当時、この『彼女の私生活』が話題を呼んだのは、作中に描かれる一筋縄ではいかない恋模様もさることながら、主人公ドクミを始めとする登場人物たちによる生粋のオタクっぷりだ。

 例えば作中、仕事でプライドを踏みにじられたドクミが、親友でオタク仲間のイ・ソンジュに悔しさを吐露するシーン。そこでソンジュが「つらい時は何を?」と投げかけると、ドクミは迷う隙なく「オタ活」と即答、そのまま二人は聖地巡礼(推しが訪れた場所に行ってその痕跡を探すファンツアーの一種)へと向かう。彼女たちにとって、過酷な現実生活を乗り切るにはオタ活あるのみなのである。

 また中国への出張を言い渡されたドクミが、母から「まさか出張は口実でアイドルの追っかけを?」と問い詰められた際に、「誰のせいでオタクに?」「お母さん、オタクは作られるのではなく生まれるの」と返し、子供のころから編み物に精を出す母、石収集に打ち込む父の姿を見ていたことが原因だと主張。「オタクからマグルは生まれない(※マグルとは、『ハリー・ポッター』に登場した言葉で「普通の人」を指す)。私のオタク気質は親譲りなの」と言い放つシーンは、その屁理屈っぽさが面白くもありながら、ドクミのブレない芯をうかがわせるところだ。

 こうした“オタク哲学”を感じさせるセリフの数々は、K-POPファンのみならずとも何かに夢中になった経験を持つ視聴者なら、思わず共感を寄せてしまうのではないだろうか。

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