『カムカムエヴリバディ』は岡山を知ればもっと楽しくなる! 県民も納得の描写の数々
11月より新たにスタートした連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)。ラジオ英語講座と3世代の女性による100年のファミリーヒストリーを描く本作だが、初代ヒロイン・安子(上白石萌音)が生まれるのは岡山県だ。岡山県が朝ドラの舞台となるのは1997年放送『あぐり』以来実に24年ぶりということもあり、地元は喜びに沸いている。
本稿では、至るところに岡山の歴史や文化、名産などが散りばめられた第2週目までを振り返っていきたい。
まず安子の実家、御菓子司「たちばな」が店を構える「朝丘町商店街」のモデルは、岡山駅と岡山城の中間に位置する商店街というロケーション設定から推測するに、岡山市内の「表町商店街」と思われる。
歴史を遡ると、16世紀後半に岡山城を本拠地とした戦国大名・宇喜多家が城下町を整備。備前国内から多くの商人や職人を集めて城下町に住まわせたという。この時、山陽道沿いに形成された商人町が表町商店街の起源となっており、安子が生まれる少し前に8つの町が合同で大売り出しを始めたことで、表町商店街は賑わった。ドラマ内で、算太(濱田岳)行きつけの映画館に「銀馬館」と看板が出ていたが、実際に商店街の最南部にある千日前には「金馬館」をはじめとする映画館が戦前に開館。それに伴い飲食店も続々とオープンし、商店街は人々の娯楽の地となったのだ。
朝丘町商店街はレトロな建物が並ぶ、下町溢れる商店街として描かれていたが、本作のドラマガイドに記載されているように、実際の表町商店街は場所によってアーケードも整備された近代的な姿だった。しかし、安子という人物を美術で表現するため、より庶民的な雰囲気でセットが作られたという。
気になるのは、実際に当時の商店街には「たちばな」のモデルになった和菓子屋があったのかどうか。残念ながら本作はオリジナルストーリーであるため、明確なモデルは存在しない。ただ岡山県には、名物きびだんごで有名な「廣榮堂」をはじめ、「大手まんぢゅうの「大手饅頭伊部屋」やむらすずめの「橘香堂」、戦後に創業され全国に店舗を構える「宗家 源吉兆庵」など、有名な和菓子の老舗がいくつもあり、実際の店舗や写真資料などを元に「たちばな」は設計されている。製作チームに話した当時住み込みで働いていた菓子職人との会話などもドラマを作る上で参考にされたらしい。和菓子を出すお皿も、岡山の伝統工芸品・備前焼。さらに橘家の食卓には郷土料理である、ままかりの酢漬けが並ぶなど、細かいところまでこだわり抜かれている。
商店街のシーンなどは京都の東映太秦映画村にセットが組まれ撮影されているが、岡山でもいくつかロケが行われている。印象的だったのは、安子と初恋の相手・稔(松村北斗)が自転車の練習をしていた場所。ここは日本三名園の一つ、後楽園の前を流れる旭川の河川敷だ。ほとりには岡山市民のシンボルでもある「水辺のももくん」と呼ばれる像があり、ドラマの公式Instagramでは上白石と松村が同じポーズをとったオフショットも公開されている。他にも、ランニング中の勇(村上虹郎)と安子が出くわすシーンに烏城と呼ばれる岡山城の石垣が登場していた。ちなみに岡山県はスポーツにも力を入れており、1941年の甲子園はドイツがソビエト連邦に宣戦布告したことで中止となり多くの球児が涙を飲んだが、戦後1965年に行われた春の甲子園では岡山東商が優勝。以降全国大会での優勝は一度もないが、毎年県内有数の強豪校が甲子園出場を目指して日々練習に励んでいる。