『恋慕』から『宮廷女官チャングムの誓い』まで 今こそ知りたい韓流時代劇の歴史

『恋慕』から振り返る韓流時代劇の歴史

時代劇ドラマをより身近にしたK-POPアイドルや新進俳優たち

 時代劇ドラマの多くは、まず、子ども時代から幕を開ける。子役といえば何人か有名どころが思い浮かぶが、『トンイ』や『善徳女王』、『太陽を抱く月』(2012年)で注目を集めたのがキム・ユジョン。『太陽を抱く月』ではほかにも、世子役キム・スヒョンの少年時代を演じた当時10代のヨ・ジングをはじめ、今や“時代劇の女神”の異名をとるキム・ソヒョン、『王は愛する』(2017年)のイム・シワンら若年期を演じた俳優陣がとにかく素晴らしかった。キム・ユジョンはその後、パク・ボゴムの初時代劇『雲が描いた月明かり』(2016年)で男装して宮中で暮らす恋愛相談家に扮し、茶目っ気に溢れたツンデレ世子とのロマンスで一大ブームを巻き起こしている。

 一方、『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』『仮面の王 イ・ソン』などにも出演したキム・ソヒョンは、『ノクドゥ伝〜花に降る月明かり〜』(2019年)で<第15代王・光海君>への復讐を誓う妓生見習いを演じ、ある事情から未亡人の村で女性のフリをすることになるノクドゥ(チャン・ドンユン)と息の合ったラブ&コメディを繰り広げた。

 こうした子役出身者や新進気鋭の若手俳優が演技の面で脱皮を図るためには、難解なセリフ回しや所作をマスターし、世界観に没頭することが求められる時代劇ドラマはまたとない成長のチャンス。今では珍しくない演技のできるK-POPアイドル(演技ドル)にとっても同様に、登竜門的な意味合いを持っている。彼らが劇中の人物と共に成長し、見事なケミストリーを見せてくれるのならば時代劇初心者にはありがたい。

 例えば、『トキメキ☆成均館スキャンダル』(2010年)は女子禁制の名門校「成均館」に男装して入学し、自分の才能を生かして運を切り開いたヒロインをパク・ミニョン、彼女を取り巻く若きエリートたちをパク・ユチョン、ユ・アイン、ソン・ジュンギが演じて4人全員がブレイク。学園ロマンスや貴族たちの勢力争いも楽しめた。『花郎<ファラン>』にはパク・ソジュンやV(BTS)、ミンホ (SHINee)、パク・ヒョンシク(ZE:A)ら錚々たる面々が集結。EXOのD.O.ことド・ギョンスも、『100日の郎君様』(2018年)で偽装結婚する記憶喪失の世子を好演した。『新米史官ク・へリョン』(2019年)では、シン・セギョン演じる結婚する気のない“本の虫”ク・へリョンが架空の職業・女性史官となって王宮で奮闘する様子に、チャ・ウヌ(ASTRO)演じる王子がすっかり魅了されていた。

 当時は、女性の生き方が容赦なく制限されていたからこそ、王妃や側室の座に一歩近づける宮女に憧れる女性も少なくなかった。だが、たとえ王位後継者となる男児が生まれても安泰とはいかず、壮絶なまでの権力争いに巻き込まれることは必至。

『恋慕』(写真はKBS公式サイトより)

 現在配信されている『恋慕』(2021年)においては、女児という理由だけで捨てられ親を知らずに育った宮女タミが、双子の兄が亡くなったため男装して世子イ・フィ(パク・ウンビン)として生きることを強いられている。さらには報われない恋の三角関係から、世子の婚姻や後継者問題、覇権争い、貧富格差、隣国・明との微妙な関係までてんこ盛り。もし女性だとバレたら、命にも関わる。フィには一体、どんな運命が待ち受けるのか……。

※P.46〜『名匠イ・ビョンフン監督の不朽の名作を、全話紹介と大相関図付きで完全ガイド 三大王道時代劇 徹底解説』

■配信情報
『恋慕』
Netflixにて独占配信中
出演:パク・ウンビン、キム・ロウン、ナム・ユンス、チェ・ビョンチャン、ペ・ユンギョン、チョン・チェヨン
原作:漫画『恋慕』イ・ソヨン作
演出:ソン・ヒョンウク、イ・ヒョンソク
脚本 :ハン・ヒジョン
製作:モンスターユニオン、イヤギサニャンクン
写真はKBS公式サイトより

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