BLドラマ、舞台は会社から学園へ 『消えた初恋』から考える“初恋”の作用

 コロナ禍による巣ごもり需要で、昨年大ヒットした『愛の不時着』や『梨泰院クラス』などの韓国ドラマ。時を同じくして、タイ発のBLドラマが女性ファンを中心に評判を呼び、熱狂を巻き起こしていた。その火付け役となったのが、2020年2月よりYouTubeにて全世界配信された『2gether the series』(以下『2gether』)だ。

 同ドラマはタイの大学を舞台に、同級生の男子ふたりが繰り広げる青春学園ラブコメ。主人公のタインが男子学生からの猛アプローチを交わすため、学校一のイケメン・サラワットと偽装恋愛を始めるところから始まり、次第に本当の恋に変わっていく模様を描いた仕掛けのあるストーリーが全世界の視聴者を夢中にさせた。

 そんな“2gether沼”にハマった人たちが、今注目している日本発のBLドラマがある。10月9日よりテレビ朝日系オシドラサタデー枠で放送開始となった『消えた初恋』だ。11月12日にCDデビューする“なにわ男子”の道枝駿佑と、昨年デビューし、快進撃を続ける“Snow Man”の目黒蓮。ジャニーズで今最も勢いのあるグループに所属する彼らがW主演を務める本作は『2gether』と同じく学園もので、高校生の青木想太(道枝駿佑)とクラスメイトの男子・井田浩介(目黒蓮)の勘違いから始まる恋を描いている。

 もとになった原作・ひねくれ渡、作画・アルコによる漫画のセリフやキャラクターを忠実に再現し、原作ファンからも好評な本作。一方でSNSなどを見ると「BLドラマは初めてだけどキュンキュンする!」という声も多く、日本でかつてブームになった田中圭主演の『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)や赤楚衛二と町田啓太のコンビによる『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(通称『チェリまほ』/テレビ東京系)のように、BLが好きな“腐女子”以外の視聴者もすんなり世界観に入っていける作品となっている。

 ただ、これまでの日本発BLドラマと大きく違うのは、“学校”を舞台に“男子学生”の恋愛を描いているという点だ。『おっさんずラブ』や『チェリまほ』は職場で出会った社会人男性が繰り広げるラブストーリーであり、そのほかBL漫画出身のよしながふみ原作による『きのう何食べた?』(テレビ東京系)は西島秀俊と内野聖陽演じる社会人の同性カップルが主人公。竹財輝之助演じる官能小説家の恋愛を描くFODオリジナル『ポルノグラファー』の相手役は猪塚健太演じる純情な大学生だが、やはり“大人”のラブストーリーだった。

 人気作のBLドラマの中では唯一、 常倉三矢による漫画を白洲迅と楽駆のW主演で実写化した『Life 線上の僕ら』が白線の綱渡りを通じて出会った男子高校生の恋を描いたものの、二人は違う学校に通っており、さらに一つの作品の中で年齢が大学生、社会人と変化。葛藤しながら未来へと歩んでいく、いわば青春の延長線上にある二人の記録ではあったが、学園ものではなかった。

 しかし、新クールは『消えた初恋』に加え、11月18日には萩原利久と八木勇征(FANTASTICS from EXILE TRIBE)のW主演で男子高生の初恋を描く青春ドラマ『美しい彼』(MBS・TBS)の放送が控えている。もともと性描写があるBL漫画が多い傾向にあり、必然的にドラマ化されるのは大人の男性たちが主人公の作品ばかりだったのかもしれないが(それでもキス止まりのピュアな恋愛ドラマが多い)、ここまで放送されている『消えた初恋』を観た限り、これまで学校が舞台のBLドラマが少なかったことが意外なほどに面白い。

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