『最愛』吉高由里子が泣き芝居で見せた梨央の“絶望” 情報屋の眼差しには変化が?

 “伝わってくる”といえば「峰」に駆けつけた加瀬が、なんのためらいもなく梨央の隣に座るのが印象的だった。それが2人にとっては当たり前の距離感であること。オープニングの語りで、加瀬の父と母は早くに亡くなったことが明かされている。加瀬もまた逃げ場を失った迷い子のように真田家にたどり着いたという意味では、母の梓(薬師丸ひろ子)や兄の政信(奥野瑛太)よりも、ずっと梨央の気持ちに近い“家族”なのだろう。

 そんな梨央と加瀬の心の近さを示した演出は、同時に梨央と大輝の距離感の変化を際立たせる。久しぶりに対話をした「峰」ではもちろん対面だった。「友達として」と言いつつも、その距離感は縮まらない。そんな「何を考えていて、どんな生活をしているのか全くわからない」という状況から、張り込みを通じて梨央の本質的なところが何も変わっていないことを知ると、脅迫犯に襲われた梨央の隣に座って懐かしい方言が自然と出てくるようになる。

 「友達として話せたら」そうかしこまるうちは、どうしたって友達のようには話せない。きっと何も言わないところにこそ「友達」のような心の近さはにじみ出るものなのだ。そうした人の機微を丁寧に描く3話だった。そして、それは徐々に存在感を大きくしてきた情報屋(高橋文哉)の眼差しにも宿っているように感じた。

 真田ウェルネスの専務・後藤(及川光博)の指示で淡々と梨央の動向を探っているように思われていたが、その眼差しに一瞬の微笑みのようなものが感じられた情報屋。名は明かされていないが、その年格好やホクロの位置から予想されるに、きっと梨央を今も変わらず愛するあの人なのではないかと予想ができる。

 康介の父・昭(酒向芳)に500万円を渡していたのも、この情報屋と見られる男だった。昭の死に深く関わっていることは間違いない。自ら梨央のもとを去りながら、身分を隠して梨央と対立する後藤に近づき、彼女をそっと見守ってきたということなのか。だが、情報屋が渡したその500万円を大々的に見出しにつけられた記事が、梨央を追い詰める。

 愛するものを守ろうとするほどに、命取りになることがある。思い返せば、康介を愛した昭も、梨央を愛した達雄もそうだった。一歩間違えば、脅迫犯から身を挺して守った加瀬も危ないところだった。今回の事件に私情をはさみまくっている大輝だって、優のために新薬開発を何よりも最優先する梨央自身だってそうだ。

 自己犠牲をいとわないことが愛することなのだとしたら、なんと愛とは危ういものか。願わくば、誰もが愛するものと穏やかな日々を手にしてほしいところだが、それぞれの愛するものを守ろうとするほどに憎しみが絡み合う世の中では、そう簡単にはいかなそうだ。

■放送情報
金曜ドラマ『最愛』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:吉高由里子、松下洸平、田中みな実、佐久間由衣、高橋文哉、奥野瑛太、岡山天音、薬師丸ひろ子(特別出演)、光石研、酒向芳、津田健次郎、及川光博、井浦新
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子
編成:中西真央、東仲恵吾
主題歌:宇多田ヒカル(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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