『007』で感じたハリウッドの新しい風 ラシャーナ・リンチが目指す、より良い映画界 

自身のルーツを代表することへの誇り

ロンドンプレミアでのラシャーナ・リンチ(Getty Images for EON Productions, Metro-Goldwyn-Mayer Studios, and Universal Pictures)

――今回演じたノーミが初登場した場面など、映画の前半はジャマイカで撮影されたシーンも多かったですね。自身のルーツがある場所での撮影はどうでしたか?

リンチ:とにかく美しく、貴重でかけがえのない経験でした。私は女性や俳優である前に、イギリス生まれのジャマイカ人だから。撮影には母を連れて行き、今までにないような体験をすることができました。ジャマイカ出身のクルーと地元のプロデューサーが生み出す、ジャマイカのエナジーと情熱がありました。特に幸せに感じたのは、自分自身のロンドンでの経験とジャマイカのそれを、『007』映画で融合できたということです。多くの俳優が、キャリアの中でこんなに貴重な経験をできるわけではありません。とても光栄に思いましたし、なによりエキストラなどの参加俳優にジャマイカ人をキャスティングできたこと、本物のジャマイカの景色を使って映画を作れたことを誇りに思っています。劇中に登場するビルやレストランも、全て実在し、本物のジャマイカ人が所有しているものです。自分がルーツを持つ国に光を当てられたことを、この作品を通して、そこに住む人たちが彼ら自身を誇れるということを、ジャマイカ人として嬉しく思っています。

ーーレプリゼンテーションという文脈で、本当に意味のあることだと思います。これまで主に白人キャストが多く占め、ヨーロッパを中心に撮影されてきた本シリーズをジャマイカの人たちもようやく身近に感じることができます。

リンチ:本当にその通りです。もう少し上の世代の人はもしかしたら、『007』初期の作品の撮影で島が使われて撮影クルーに出会ったことがあるかもしれない。でも今回は若い世代の人たちにとっての普段の生活シーンが『007』の世界になったわけですから、凄いことです。こんなふうに大きなカルチャーシーンに我々を、ジャマイカという国を登場させてくれたことで島に“明かり”が灯るんですよね。ジャマイカを舞台にした代表的な映画作品やドキュメンタリーは少なく、それについての話題も全てポジティブなものというわけじゃない。でも、ようやくこうして国のポジティブで美しい面が見られるようになった。本作で映されたジャマイカの要素からは、本当のジャマイカらしさが伝わる。『007』という大きな作品でこれが実現できたのは信じられないことですし、将来自分の孫に語り継ぎたいほど誇りに思っています。

――大きな作品といえば、マーベル映画『キャプテン・マーベル』のマリア・ランボー役で世界的に注目を浴びましたが、そこから本作への旅路はどのようなものでしたか?

リンチ:マーベル・シネマティック・ユニバースの一員にはずっと昔からなりたかったんです。長い間、マーベルのオーディションを受けてきました。そしてマリア・ランボーの役で受かった時、納得がいったんです。「この役はキャリアを飛躍させてくれるものになる」と、確信しました。案の定、マリア役を演じたことは今回ノーミを演じる上で必要だったレッスンでもあり、学ぶ必要があったことを学べた機会でした。飛行機で空を飛んだり、キャラクターに軍の背景があったり、マリアとノーミという二つのキャラには共通点があります。しかし同時に彼女たちはエネルギーとしては異なる存在で、役者として全く違う態度の役に息を吹き込む良い経験になりました。ノーミは正直で直接的なのに対し、マリアのエネルギーはとても南部らしい自由なもので、親切で礼儀正しく、優しい。この大きな違いが、逆に私自身にとって軍人の黒人女性という役の新たな一面に挑戦する意欲をかき立てました。

――今作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』のアクションは『キャプテン・マーベル』での経験に比べて、どうでしたか?

リンチ:『キャプテン・マーベル』では確か戦うシーンが一つしかなかったはず……(笑)。そうじゃなかったとしても、私はあまりフィジカルが伴う撮影をしなかったんです。周りではたくさんのアクションが起きていたけれど、私は飛行機を飛ばしたくらいで。しかしノーミの場合は本格的なスタントが求められました。様々な種類の武器を使いこなしたり、さまざまなスタイルの戦い方をしたり。本当に00エージェントのマインドセットに自分を近づけました(笑)。こういった演技は初めての試みでしたね。そしてスタントを自ら行ったことで、セットでどんなことを要求されても自分の身体と心が対応できるようになっていました。スタントチームの鍛え方は『ノー・タイム・トゥ・ダイ』だけのためというより、今後の私の一生のためのもの、というくらい凄いです(笑)。今や私は、“忍者”です。

――最後に、あなたにとっての“ジェームズ・ボンド”とは?

リンチ:個人的に、ジェームズ・ボンドとは『007』シリーズの“生地”であり、イギリスにとっての、世界にとっての“生地”だと考えています。シリーズをボンド抜きで考えることは不可能だし、イギリスについて考えた時にボンドを思い浮かべずにはいられない。これまでもずっとそこにあり続け、これからも永遠に残り続けるものです。シリーズが新しくなった時も、どんなふうになっていくのか興奮しました。当時、ダニエル・クレイグがキャスティングされたときから、彼がどんなふうにこのキャラクターを表現していくのか見るのは楽しかったです。とても危険でエッジがあって、たくさんのトラウマを抱えている。私たちの予想を超え続ける姿をいつも楽しく見てきました。そして彼のおかげで、個人的に以前よりジェームズ・ボンドファンになりました。だから今後も、バーバラ・ブロッコリがどのようにシリーズを作っていくのか興味深いですね。

■公開情報
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
全国公開中
監督:キャリー・フクナガ
製作:バーバラ・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 
脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、スコット・バーンズ、キャリー・フクナガ、フィービー・ウォーラー=ブリッジ
出演:ダニエル・クレイグ、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、レア・セドゥ、ベン・ウィショー、ジェフリー・ライト、アナ・デ・アルマス、ラシャーナ・リンチ、ビリー・マグヌッセン、ラミ・マレック
主題歌:ビリー・アイリッシュ「No Time To Die」
配給:東宝東和
(c)2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.
公式Twitter:https://twitter.com/007
公式Facebook:www.facebook.com/JamesBond007

関連記事