デヴィッド・ボウイはなぜ特別なのか 『スターダスト』監督が明かす、知られざる過去
映画『スターダスト』が10月8日より全国公開中だ。本作は、音楽史にその名を刻むデヴィッド・ボウイの若き日の姿と、“ジギー・スターダスト”誕生を描いた物語。のちにボウイの最も有名な別人格“ジギー・スターダスト”を生み出すきっかけとなった瞬間の舞台裏、キャリアのターニングポイント、それに関わった人たち、そしてボウイの内面が映し出される。
等身大のボウイの姿が描かれる本作で監督を務めたのは、イギリス出身のガブリエル・レンジ。今までにない異色のボウイ像をどのように作り上げたのか、本作を通して改めて気づいたボウイの魅力から、ボウイのフェイバリットアルバムまで話を聞いた。
「ボウイの内面にフォーカスすることは常に意識していた」
ーーイギリスでは昨年公開された本作が、日本でも公開を迎えることになりました。
ガブリエル・レンジ(以下、レンジ):イギリスでは公開時、コロナ禍ということもあり複雑な心境だった。こうして遠く離れた日本でも公開されることはすごく嬉しいし、光栄なことだと思っているよ。
ーー今回、デヴィッド・ボウイを主人公にした理由は?
レンジ:まず、僕はずっとデヴィッド・ボウイのファンだった。ティーンエイジャーの頃は彼のアルバムも全部買っていたしね。大人になってからボウイの伝記本をいろいろ読み漁っていくうちに、彼の音楽と同じくらい人として彼を好きになっていったんだ。その後、ボウイとイギー・ポップが一緒にベルリンで過ごした1977年頃を追うドキュメンタリーを撮っていたんだけど、音楽の権利関係の問題で一時中断になった。そんなときに、フィクションでボウイの映画を撮りたがっているプロデューサーを紹介されて、クリストファー・ベルが書いたプロットも魅力的だったから、それをさらに膨らませて、ボウイの兄との関係だったりより内面に迫った映画を作るというコンセプトが出来上がった。それが、『スターダスト』の始まりさ。
ーーボウイで一番好きなアルバムは?
レンジ:『ロウ』が一番好きだけど、『世界を売った男』に『ハンキー・ドリー』も捨てがたいな(笑)。でも、やっぱり僕にとっては『ロウ』だね。
ーー実在する人物であるボウイをフィクションとして描くにあたって、気をつけていたことは?
レンジ:この映画自体はフィクションだけど、映画の中で描かれている出来事はどれも実際にあったことがベースになっているんだ。ボウイに近しい人物が書いた記事や伝記を調べたり、ボウイのインタビューをくまなくリサーチして、実際にあった出来事を作品に仕上げられるよう注意を払った。あと、ボウイのアーティストとしての活動以上にボウイの内面にフォーカスすることは常に意識していたね。