『うきわ』女たちの逃避行が終焉に 西田尚美が芝居でみせる“不倫する側の葛藤”

 社内表彰の“輝く女性賞”を受賞してもエリート彼氏がいてもそれが本当に自分の欲しいものなのかもわからず、常に自分が精一杯「来る球全部打ち返してきた」当然の結果だと言う福田さん。むしろ、福田さんはたっくんに「あいつは一人じゃ生きてけないから」と庇護される側の麻衣子が羨ましいのかもしれない。

 特に勝とうと思っていたわけでもなく、寄せられるある意味無責任な周囲からの期待に応え続けていたら、どんどん自分の評価が高くなり、今さらそこから“降りられない”状態にあるのが福田さんなのだろう。一度勝ってしまえば、勝ち続けるしかなくなる。

 かつて実らなかった恋の相手に“不都合な関係”だとはっきりと言われ、昔は眩しかったその懐にどしどし踏み込んでくるたっくんの、深くは考えない無邪気さや人懐っこさに、今は幻滅させられ傷つけられるばかりだ。

 愛宕さん(小西桜子)の秀逸な指摘がまさに言い得て妙である。「試合にも放棄権あるんですよ。試合全部出て、来る球全部打ち返して、息抜きにルール違反してボロボロじゃないですか。外野の野次に惑わされないで、打つ球くらい自分で見定めましょ」今や“何でも持っている”かに見える福田さんのことをこれまで「ボロボロ」だなんて見抜く人は彼女の周囲には誰一人いなかっただろう。

 「中山さんの奥さんにはこんな悩みないんだろうな」とこぼす福田さんに「悩みでしたら私にもあります。種類は違うかもしれないけどちゃんと悩んでる」と答える麻衣子。男によって勝手に「一人で生きていける女」、「一人では生きていけない女」とラベリングされた女性同士が違う種類であっても痛みをこぼし合うシーンは見事な応酬で、その傷は互いに決して無視できるものではないだろう。

 女たちの逃避行が終焉を迎えたことで、二葉夫婦も中山夫婦も“元通り”といくのか。ここからが本当の苦しみや寂しさの始まりで運命の分かれ道にも思えてならない。

■放送情報
『うきわ ―友達以上、不倫未満―』
テレビ東京系にて、毎週月曜23:06〜放送
動画配信サービス「Paravi」「ひかりTV」にて配信
出演:門脇麦、森山直太朗、田中樹(SixTONES)、高橋文哉、小西桜子、大東駿介、蓮佛美沙子、西田尚美
原作:野村宗弘『うきわ』(小学館ビッグスピリッツコミックス)
監督:風間太樹、太田良
脚本:倉光泰子、神田優
音楽:坂本秀一
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:本間かなみ(テレビ東京)、滝山直史(テレビ東京)、唯野友歩(AOI Pro.)
制作:テレビ東京/AOI Pro.
製作著作:「うきわ ―友達以上、不倫未満―」製作委員会
(c)野村宗弘・小学館/「うきわ ―友達以上、不倫未満―」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/ukiwa/
公式Twitter:@tx_ukiwa

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