『ナイト・ドクター』は紛れもない社会派ドラマだった 岸優太演じる深澤の成長譚の側面も

 もちろんこのドラマの物語を形作ってきたのは深澤の成長譚に他ならない。今回ゴミ処理場で患者の右足を切断するという選択を取り、戸惑う患者の同僚たちに対して「彼に生きてほしいと思うなら黙っててください」と強い言葉をぶつける深澤。そこにはもう、第1話のナイトドクターとしての勤務初日に工事現場の崩落事故で患者が運び込まれるなかで何もできずに戸惑うだけだった深澤の姿はない。その時と同じく、患者の命を救うために足を切断するという処置を対比させることで、第1話から最終話にかけての深澤の成長ストーリーをきれいにまとめ上げていくのだ。

 電車やエスカレーターの点検や、ゴミ収集。そしてもちろん医療従事者も然り。“誰もやりたがらない”けれど“誰かがしなくてはいけない”、こうしたエッセンシャル・ワーカーと呼ばれる仕事に世間の耳目が集まるようになったのはコロナ禍となった昨年来からだ。日中に働く人もいれば、深夜に働く人もいて、24時間365日、人が生き続けている限り社会を支える誰かが存在している。それはこうした医療やインフラだけでなく、コンビニや娯楽産業など、“当たり前の生活”に存在するすべてにおいていえることだ。

 あえてこのドラマでは“夜間医療”という部分を主軸に据えたわけだが、「当たり前にある毎朝を守る」人たちがいることをより身近なものに見せるために、横浜というわかりやすいロケーションがあり、同時に“働き方改革”という誰もが当事者になりうる労働環境の新たな動きがフックになった。そういった意味で、このドラマはたしかに救急医療の現場を描く「医療ドラマ」であったわけだが、2021年というあらゆることが“変わろうとしている”世の中を映した、紛れもない社会派ドラマといえるのだろう。

■放送情報
『ナイト・ドクター』
出演:波瑠、田中圭、岸優太(King & Prince)、岡崎紗絵、北村匠海、沢村一樹、一ノ瀬颯、野呂佳代、櫻井海音、梶原善、真矢ミキ、小野武彦、原菜乃華、宮世琉弥ほか
脚本:大北はるか
プロデュース:野田悠介
演出:関野宗紀、澤田鎌作
制作・著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/ NightDoctor/
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