『ナイト・ドクター』は紛れもない社会派ドラマだった 岸優太演じる深澤の成長譚の側面も

 本郷(沢村一樹)からナイトドクターチームの解散を告げられ、突然のことに衝撃を受ける美月(波瑠)たち。しかし続けざまに本郷の口から伝えられたのは、あさひ海浜病院でのナイトドクター制度の成功を受けて、全国の伯桜会グループの主要病院でも導入することになったという話であった。そして5人には、それぞれ新たな場所で、これまで培ってきたノウハウと“信念”を伝えるという役目が与えられることになるのだ。

 異例の6月スタートにはじまり、オリンピックによる2週間の中断を経て、9月13日に最終回を迎えたフジテレビ系列月9ドラマ『ナイト・ドクター』。美月と深澤(岸優太)、桜庭(北村匠海)、幸保(岡崎紗絵)、成瀬(田中圭)。5人それぞれのバックグラウンドと、医療を取り巻く課題とを織り交ぜながら描いた前半から、彼らの“チーム”としての結束が高まるなかでより大きな社会全体の様々な課題へと目を向けた後半。そして最終回で描かれるのは、やはり医療現場に限らない“エッセンシャル・ワーカー”全体への敬意という、極めて今日的なメッセージであった。

 ナイトドクター解散の報せを受けたその夜、各所で事故が相次いで発生する。美月は電車の車両基地へ、深澤はゴミ処理場へ、幸保はオフィスビルへと向かい、病院に残された成瀬は本郷から救命センターの指揮を任され、桜庭は院内のトイレで容態が急変し倒れている患者を発見する。それぞれがそれぞれの場所で、目の前の患者を救うために奔走するなか、深澤はショック状態の患者を目の前に焦りを感じていた。そして成瀬からの電話をきっかけに、大きな決断を選択するのである。

 前回の停電エピソードでは、次々と運び込まれてくる患者を1人残らず救おうとする病院全体を使った一般的なチームプレイが展開したのに対し、今回のエピソードでは個人個人に与えられた現場と患者というある種の“独立”にフォーカスが当てられていく。もっぱら深澤の成長が大きく取り上げられてきたこのドラマの中で、密かに進化を遂げていた桜庭が1人で患者の処置に当たる姿が描かれることによって、5人全員が救急医としてある一定のラインに並んだことがはっきりと窺える。解散の先にある新たな始まりを前にして、これこそが期待されていたチームプレイの最たる姿であろう。

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