実写化もされた『古見さん』『さんかく窓』 アニメならではの映像表現でどう魅せるか
続いて『さんかく窓の外側は夜』は、強い霊視能力を持ったまま書店員として働く三角と、除霊師として活動する冷川が出会い、三角の力を使って霊を祓っていく物語。
彼らが2人除霊活動を続けていくに連れ、オカルト系宗教団体と暴力団との怪しい関係に巻き込まれていくようになり、2人に加えて迎系多や非浦英莉可といった各キャラクターの過去、考え方、生き方について深く掘り下げ、人間関係、感情の揺れ動きにスポットが当たっていく。ホラーサスペンス作品として丁寧に描かれた作品だ。
原作を手がけたヤマシタトモコは、2007年に『くいもの処明楽』にて「このマンガがすごい! 2007(BL部門)」で1位を獲得して以降、一般ジャンルでも才覚を発揮するようになり、「このマンガがすごい!2011 オンナ編」では『HER』、『ドントクライ、ガール』でワンツーフィニッシュを達成。その後は女性誌・青年誌と活躍の場を広げ、根強い支持を得てきた。
BLと聞くと、垢ぬけていて華のあるようなデザイン、絵をもった作風を思い出しがちだが、ヤマシタの絵はそういったイメージとは真逆で、シンプルかつ飾り気がない。今作では三角が地味目な男性風貌なのだが、そんな彼がさまざまな経験を経て、ドンドンと強かな男性へと変化していく流れに、ヤマシタトモコの作風・真骨頂を感じられる。
本作がアニメ化することで一番に期待されるのは、三角&冷川というバディものとしてどう描かれ、または演技されるかだ。元々BL作家として名を馳せたヤマシタらしく、序盤の2人の描かれ方はボーイズラブな向きが強い。顔を近づけたり耳元で囁くシーンやボディタッチがとても多く、除霊シーンはまさにそう。
原作序盤で三角が「除霊ってこんなにエロくていいの?」と冷川に話しかけるのが最たる例で、グレーゾーンのギリギリを狙うような表現もある。またキャストは、三角康介に島崎信長、冷川理人に羽多野渉、迎系多に斉藤壮馬と、声色が甘く温かみのある3人を配役しており、その点においても「狙っている」ことが想像できるだろう。冷川&三角でどのような絡みを見せてくれるのか、PVでもその一端が確認できる。
アニメーションでいえば、幽霊をどのような陰惨なデザインで描くかがやはり注目すべきところ。本作の特徴でいえば、冷川、迎系多、非浦らによる霊や呪いの類と対峙、冷川の手が体を取りぬけて除霊を行うシーンなど、想像しずらかった感覚的描写をどうアニメーション化するかにも注目したい。
※島崎信長の「崎」は「たつさき」が正式表記。
■放送情報
『古見さんは、コミュ症です。』
テレビ東京ほか放送中
キャスト:古賀葵、梶原岳人、村川梨衣、日高里菜、大久保瑠美、藤井ゆきよ、前島亜美、ブリドカットセーラ恵美ほか
原作:オダトモヒト(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
総監督:渡辺歩
監督:川越一生
シリーズ構成:赤尾でこ
キャラクターデザイン:中嶋敦子
美術監督:佐藤勝
色彩設計:林由稀
撮影監督:並木智
編集:小島俊彦
音楽:橋本由香利
音響監督:渡辺淳
音響制作:HALF H・P STUDIO
アニメーション制作:オー・エル・エム
制作:小学館集英社プロダクション