『おかえりモネ』高岡早紀&マイコの何度も噛み締めたい言葉 莉子が主役だった第17週

『おかえりモネ』莉子を救った高村の言葉

 『おかえりモネ』(NHK総合)の第17週「わたしたちに出来ること」。春から遠距離恋愛になるものの、百音(清原果耶)と菅波(坂口健太郎)は心が通じ合い、幸せいっぱい。仕事も順調な様子が描かれた。その一方で、朝岡(西島秀俊)の後任に気象キャスターに抜擢されたももの視聴率が落ち、説得力がないと判断され、「深く傷ついた経験が何もない」と自らを追い詰めていく莉子(今田美桜)の心情が胸に迫る1週間だった。

 事の発端は、朝岡がテレビ局の社会部気象班の制作進行を束ねるデスク・高村(高岡早紀)に莉子だけでなく、内田(清水尋也)も気象キャスターにしようという提案したことだった。自信を失っている彼女を心配して「優しい顔して、あなたやることが鬼だわ」という高村に「鬼にもいろいろ考えがあるんですよ。ただ暴れたいわけじゃない。部長に掛け合ってもらえませんか?」と朝岡は言っていた。負けん気が強く、誰からも愛されるタイプの莉子は、高村やほかの仲間たちが応援してくれれば、自分で試練を乗り越えることができるし、この機会に内田もキャスターとして認知されれば仕事の幅も広がるという朝岡なりの計算が働いたのだろう。それでも莉子のメンタルを心配して「神野さん、大丈夫かな」と高村は心配するのだが、上司である朝岡は外部のデスクである高村にフォローを依頼していた。

 そして、第84話でいきなりスーツを着てカメラチェックを受ける内田を見て、当然ながら莉子は動揺を隠せなかった。高村が「ごめんなさい、ちゃんとお知らせするつもりだったんだけど」と順序立てて話を通せないくらい、視聴率の悪さに周囲も焦りを感じていたらしい。莉子が番組を降ろされると思い込むのは成り行き上、仕方ないことのようだ。

 ただ、「私みたいなのは手に人形つけてパタパタさせて明るい話題しゃべってればいいって、大事な情報は別の人間が伝えるからあなたはニコニコ笑っていればいいって、そういうことでしょ?」と衝動的に言い放った莉子の隣で聞いている百音の立場は? 何でも真面目に受け止める百音が何も感じないはずはないのだが、その場で表情も変えずに彼女が何を感じていたのかは、それぞれ慮るしかない。百音への気遣いも含め、「やめなさい。仕事に優劣つけるなら、それは失礼よ」と高村が莉子を諭した。ここで「すみません」とすぐに自分の間違いを素直に謝ることができるのも莉子の美点だ。

 高村は続ける。

「それから自分で自分をおとしめるのもやめなさい。もうそういう時代じゃない。まぁ、私も昔おんなじ理由で番組降りたけどね。ていうか、降ろされた」
「私みたいなのはなんて言っちゃ駄目よ。誰よりも自分が、あなた自身で実力で勝負できるって信じなさい。信じられるくらいになりなさい。あなたが闘う場所は私が死守するから」

 上司であり、誰よりも相談に乗るべき立場であり、指導しなければならない朝岡が莉子の知らないところで内田を推すような不信感でいっぱいになるところを、高岡早紀演じる高村が精一杯彼女をフォローしてくれているのが救いになる。朝岡にしてみれば、男性の自分が説得するよりも、実際に見た目で判断されて女性ゆえの屈辱を味わった高村の言葉の方が莉子の心に響くと判断していたのかもしれない。実際、こんな上司がいてくれたらどれだけ心強いか、と多くの女性が高村の言葉に勇気づけられたはずだ。

 朝岡のように達観した考えを持つ上司は、大きなプロジェクトを動かすときには頼りになるし、尊敬したくなる要素もたくさんあるだろう。だが、自信を失いかけて個人的に悩んでいる相手を前にすると逆に相手を追いつめてしまうことがあるのかもしれない。朝岡は無責任に他人に任せているわけではなく、最終的に責任を取るのは自分だということを周囲にも伝えたうえで動いている。莉子を心配した沢渡(玉置玲央)からの電話にも堂々と答えている。「え? 何でそんなことで電話してくるの?」と感情的になることもなく、一方的に責められてキレることもない。聞かれたことに対して淡々と自分の考えを述べる、自信も覚悟もあることが伝わる。

 朝岡は沢渡に「神野さんなら明るさや爽やかさだけが彼女の武器じゃない。もっと彼女の真面目さや強さを自分で生かすべきだし、見ている人たちもそういう彼女を求めるべきだ」と話していたが、結局のところ莉子が気づきを得たのは百音と汐見湯に行き、菜津(マイコ)の言葉を聞いたからだった。

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