『スペース・プレイヤーズ』『フリー・ガイ』 大手スタジオのコンテンツ活用が本格化?

大手スタジオのコンテンツ活用が本格化?

 そんな潮流の中で決定打とも言える、大きなインパクトを映画業界に与えたのが、2018年のスティーヴン・スピルバーグ監督作『レディ・プレイヤー1』。アンブリン・エンターテイメントやユニバーサルが絡んでいるキャラクターを中心に、それこそワーナーの目玉商品『シャイニング』、つまり別スタジオの作品を大々的にフィーチャーできたのは、巨匠スピルバーグだからこその所業である。この時もありとあらゆるカルチャーコンテンツが登場し、映画ファンを沸かせたことが記憶に新しい。あの興奮を味わってしまったが故に、ファンの求める“サプライズ”の水準は上がり、スタジオ側もそこにヒットの法則を見出して「もっとだ! もっとやれ!」と量を増やしたり、本当に出すのが厳しい作品を自社で囲って独占したりと、合戦場のような状況が生まれてしまったのではないだろうか。

『レディ・プレイヤー1』(c)2018WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED

 『フリー・ガイ』と『スペース・プレイヤーズ』を観てふと思うのは、その過剰接種の先にある感覚の麻痺への懸念だ。まだギリ嬉しい驚きとして捉えられたものの、しばらくすると「えっ!? 嘘、このキャラなんでいるの!?」とならず、「ああ、いるわ」みたいな。むしろ「え? なんで(ゲスト)いないの?」と何か出てくるのが当たり前になってしまう未来。

『スペース・プレイヤーズ』(c)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

 そういえば『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』も、言ってしまえば作品をまたいでキャラがたくさん登場する、ファン垂涎の作品だ。しかし、本作の予告編には誰もが“本気で驚き”、信じられない様子でグリーンゴブリンのボムに歓喜していた。何か違う、ピュアな感動。ただMCUのキャラがたくさん出るから期待するのではなく、“あの”サム・ライミ版から始まった『スパイダーマン』の歴史にとって意味深い一作になるだろうという予感に我々は胸をときめかせたのではないだろうか。

 ここに、ただ単にたくさんの映画キャラを出せばいいのではなく、“必要性のある文脈かつ、ファンが本当に求める形で”というカメオ出演の丁寧さの違いが垣間見える。懸念した“飽きの未来”を打破するスタジオ側の解決策は、もしかしたらこういった、より一層洗練されたサプライズの形なのかもしれない。

■公開情報
『スペース・プレイヤーズ』
全国公開中
監督:マルコム・D・リー
製作:ライアン・クーグラー、レブロン・ジェームズ、マーベリック・カーター、ダンカン・ヘンダーソン
脚本:ジュエル・テイラー、トニー・レッテンマイアー、キーナン・クーグラー、テレンス・ナンス
出演:レブロン・ジェームズ、ドン・チードル、セドリック・ジョー、ソネクア・マーティン=グリーン、ゼンデイヤ
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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