パク・ソジュンはなぜ日本の視聴者の心を掴んだ? 『梨泰院クラス』など代表作から分析

言葉にならない想いを語る寡黙な演技

『梨泰院クラス』Netflixにて配信中

 2020年の自粛中に大きな話題を呼んだのが『梨泰院クラス』。韓国ドラマは女性ファンが多いイメージだが、男性からも注目を集めたことで人気を博した。パク・ソジュンが演じたのは。正義感の強い硬派な青年パク・セロイ。学校の誰もが逆らえない御曹司の非道な言動にも一矢報いる。その父親からの脅迫とも言える土下座の強要にも屈しない。どんなにどん底に落とされても、信念を曲げることない。そんな志に共鳴した仲間と共に真っ当な方法でリベンジを誓うのだ。

 先述したように、韓国ドラマではキャラクターたちが心情をセリフにしてよく話す。だが、このパク・セロイは言葉数は決して多くない。だが、セリフが少ないからといって何を考えているのかわからないとあっては、これほど視聴者の共感を得ることは難しい。そこでパク・ソジュンは、自分の頭に手を置く独特な動きなどを用いて心情を表現。むしろ、その表情からどんな言葉を飲み込んでいるのかが痛いほど伝わってくるから不思議だ。また、言葉で訴えることが苦手ゆえに宿敵を殴ってしまい刑務所に行くことになるなど、因縁がより一層複雑になっていくのも納得の流れも生み出していた。

 ラブコメディものでブレイクを果たしヒット作を連発させたことで“ラブコメの神“との異名を持つパク・ソジュン。だが、本作では原作ウェブ漫画のキャラクターにちなんだ髪型になり、そのキラキラとしたオーラは封印。泥臭く、不屈の精神で立ち向かっていく姿に、誰もが応援せずにはいられない。私たちは老若男女を問わず、寡黙に人並み外れた努力を続ける人に惚れてしまうもの。そんな魅力的なキャラクターを見事に演じきったパク・ソジュンにも惚れ惚れしてしまうのは避けられない。

媚びない男が恋する相手にだけ見せる極上の“デレ”

『彼女はキレイだった』(MBC公式サイトより)

 そして現在、中島健人(Sexy Zone)&小芝風花のW主演のリメイクドラマがクライマックスを迎えている『彼女はキレイだった』。本作でパク・ソジュンが演じるのは、ファッション誌の副編集長チ・ソンジュン。子供のころはふくよかな体型だったソンジュンだが、15年経って誰もが色めき立つイケメンとなってNYから帰国する。幼なじみであるヒロインとの初恋を片時も忘れたことのない一途な青年だ。

 だが、職場で見せる彼の顔はまさに“ドS”。仕事にはキッチリと成果を出していくからこそ、仲間にも同じくらい高いプロ意識を求める。そこには参加して間もないからという言い訳も一切通用しない。「会議の提案は1人3分」と砂時計を出し、生ぬるい企画はバッサバサと却下。ミスしたときには容赦なく怒号が飛ぶ。上司となる編集長に対しても、その厳しい眼差しは変わらない。彼がいるだけで、その場がピリッと引き締まる。そんな空気から変えていく、演技の妙を見せてくれる。

 その切れ味の良さは、見ていて背筋が伸びるほど。しかし、だからこそ初恋の人を思う瞬間の解けるような笑顔に、こちらの口元も緩んでしまう。15年前とは容姿が変わったことから、ソンジュンを落胆させまいと美人の友人と入れ変わってしまったヒロイン。その友人を初恋の人だと信じるソンジュンのどこまでも甘い対応と、ヒロインに対する冷酷な対応との対比が切なくて仕方ない。だが、その究極のツンデレとも言える演技の振れ幅があってこそ、このドラマの面白さが際立つのだ。

 こうして振り返ってみると、パク・ソジュンの演技にはキャラクターの中に1本真っ直ぐな筋が通っているのがわかる。それはセリフだけではなく、表情から、行動から、醸し出す空気から感じられるもの。決して表面的ではなく、内面的からにじみ出るもの。自分に厳しく、有言実行。そして、愛する人には思いっきり甘い。その軸のブレなさが、見る者の胸をときめかせ、共感して心を打ち、“こうありたい”と憧れてやまない。そんな魅力的なキャラクターを演じるパク・ソジュンが、次はどんな作品を生み出してくれるのか楽しみでならない。

■配信情報
『梨泰院クラス』
Netflixにて配信中
出演:パク・ソジュン、キム・ダミ、ユ・ジェミョンほか
原作・制作:キム・ソンユン、チョ・ガンジン

『彼女はキレイだった』
Netflixほかにて配信中
出演:ファン・ジョンウム、パク・ソジュン、チェ・シウォン、コ・ジュニほか
脚本:チョ・ソンヒ
演出:チョン・デユン
写真はMBC公式サイトより

『キム秘書はいったい、なぜ?』
Netflixほかにて配信中
出演:パク・ソジュン、パク・ミニョン、イ・テファン、カン・ギヨン、チャンソン(2PM)、ピョ・イェジン、キム・ヘオク、キム・ビョンオク、ファン・ボラ、カン・ホンソク、イ・ユジュン、ベク・ウネ、ホ・スンミほか
演出:パク・ジュンファ
脚本:ペク・ソンウ、チェ・ボリム
(c)STUDIO DRAGON CORPORATION

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