『おかえりモネ』百音と未知の葛藤 「何でお姉ちゃんなの」に込められた心の痛み

「明日迎えに行きます。10時では早いですか?」
「大丈夫です。待ってます」

 そんな2人のメッセージのやり取りから、百音(清原果耶)と菅波(坂口健太郎)の恋もようやく結ばれるかと思われた『おかえりモネ』(NHK総合)だが、第75話に菅波は一切登場しない。

 午前2時。百音に亜哉子(鈴木京香)からの着信。気仙沼に帰ったはずの亮(永瀬廉)がまだ船に戻っていないのだという。美波(坂井真紀)の母・フミエ(草村礼子)と再会した新次(浅野忠信)と亮は、死亡届への押印を頼まれていた。届に判を押すことは自らの手で妻の死を認めることとなる。新次は再び禁じられていた酒に手を出し大暴れ。今は耕治(内野聖陽)が新次を強く抱きしめてやることしかできなかった。

 新次が暴れていることは警察から亮にも連絡が入っていた。亜哉子がわざわざ深夜に掛けてきたのは百音(と未知)からなら亮の携帯に繋がるのではないかという思いから。このことが百音と未知(蒔田彩珠)の間に大きな亀裂を生むことになる。

 第15週のタイトルは「百音と未知」。第75話の後半にこのタイトルが集約されていると言っても過言ではない。未知からの電話には出ないが、百音の着信は取る亮。百音は未知の顔を見て、気づいたように音声をスピーカーに切り替える。切り替えてしまうと言った方が正しいだろうか。亮は「俺、もう全部やめてぇわ。ごめん、俺やっぱモネしか言える相手いない」と抑え込んでいた思いを打ち明け、電話を切るのだった。

 百音と未知の間には、少しだけの距離がある。それは「お姉ちゃん、津波見てないもんね」と未知が口にしてしまった震災だけでなく、水産試験場に就職し気仙沼で家業の養殖を担う未知と東京で気象予報士として夢を叶えた百音との違いにも表れている。震災で津波を見た未知と見なかった百音、地元を離れた百音ととどまる未知。頻繁に連絡を取り合うくらいに相手を思いやってはいるが、姉妹としてそれぞれが抱える葛藤もある。

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