沢田研二だからこその“ダメ親父像” 15年ぶりの映画で見せた“キネマの神様”の微笑み

沢田研二が見せた“キネマの神様”の微笑み

 そんな沢田は冒頭で述べたように、世代を超えて多くの映画ファンから愛されている存在だ。彼の出演作で最も有名なものといえば、やはり『太陽を盗んだ男』(1979年)だろうか。同作では、原子爆弾を製造し政府に脅迫を仕掛ける理科教師という奇矯な人物を演じ、刑事役の菅原文太と死闘を繰り広げた。沢田が演じた城戸誠という人物の危険な目つき、掴みどころがないセリフとその語調の数々、アクロバティックな身のこなし……それらすべてが一度観たら忘れられないものとなること必至。映画史において、題材からしても語り継がれる作品だが、看板を背負った俳優・沢田研二の存在は、本作を語る上で切り離すことは不可能である。

 ほかにも沢田は、多くの映画作品で功績を残してきた。筆者が個人的に愛してやまないのは、森田芳光監督作『ときめきに死す』(1984年)や藤田敏八監督の『リボルバー』(1988年)、鈴木清順監督作の『夢二』(1991年)あたり。演じているのは、まったく心の内が読めないテロリストから(この手のキャラクターは往々にしてそういうものかもしれないが)、拳銃を盗まれる間抜けな警察官、“大正浪漫”の象徴的な存在にまで至る。いずれの作品も沢田が映画の顔。タッグを組んだ監督たちの名や、それぞれの作品の映画史における位置づけから、沢田研二という人が、いかに多くの映画人、映画ファンに愛されてきたのか分かるに違いない。

 さて、本作『キネマの神様』は「松竹映画100周年記念作品」として製作された作品だ。この波乱の、激動の時代において、撮影延期や公開延期などの困難を越えて誕生した。映画に愛されてきた沢田研二を中心に、本作に関わったすべての者に「キネマの神様が微笑んだ」のだと思いたいものである。

■公開情報
『キネマの神様』
全国公開中
監督:山田洋次
VFX監修:山崎貴
脚本:山田洋次、朝原雄三
原作:原田マハ『キネマの神様』(文春文庫刊)
出演:沢田研二、菅田将暉、永野芽郁、野田洋次郎、北川景子、寺島しのぶ、小林稔侍、宮本信子、片桐はいり、原田泰造
主題歌:「うたかた歌」RADWIMPS feat.菅田将暉(Muzinto Records/EMI)
配給:松竹
(c)2021「キネマの神様」製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/kinema-kamisama/

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