『おかえりモネ』心に残る神回 西島秀俊×内野聖陽の言葉が今を生きる私たちに突き刺さる

 土地とは、人なのだ。特に、集落や村、地方の土地ほどそこに住む人々の強いコミュニティで成り立っているように感じる。それは何代にわたって続き、お互いに助け合い支え合っていきていくように継がれてきた。いともたやすく捨てることはできないものだ。しかし、そこに住む若者の選択肢を無意識的に狭めることにも繋がっていることは事実である。だからこそ、耕治は若い頃出て行ったけど中途半端に戻ってきた自分とは違い、東京で自由に、楽しそうに仕事をしている百音のことが嬉しくて仕方ないのだと話す。彼女は、“希望”なのだと。

「娘たちだけじゃないな、子供たち全員に言ってやりたい。どうなるかわからない世の中、どこに行ったって構わない。ただ、お前たちの未来は明るいんだって。決して悪くなる一方じゃないって、俺は信じてえ。言い続けてやりてえ」

 土地や人のしがらみを大事にしたい気持ちと、それを誰かに押し付けたくない、押し付けられたくない者としての気持ち。相反し、簡単にはまとまらないその感情の中で涙を滲ませながら強く言ってくれた耕治の言葉は、それこそ涙を誘う。若者も不安だ。地方を出てやりたいことをやるのが正解なのか、残って地元のために尽くすことが正解なのか。前者を選んでも、後者を選んでも罪悪感や後悔は少なからず残るもの。世の中も目まぐるしく変わり、連日のニュースは暗くて、どうしたらいいのかわからない。しかしそんな今だからこその耕治の言葉は、本当に、優しい。

 「なんだか語りすぎじゃったね」と2人の大人が涙ながらに笑い合う。それを同じく涙を滲ませて見つめる、百音。父の言葉は、娘に限らず多くの視聴者の心に届いたはずだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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