『フィアー・ストリート』3部作は何を描いた? Netflixとスラッシャー映画の相性

『フィアー・ストリート』は何を描いた?

Netflixとスラッシャー映画の相性 広がるクリエイティブの可能性

 そもそも、この『フィアー・ストリート』を最初に観た時の印象で強かったのは、「とてもNetflix的な作品だ」ということだ。それは言い換えれば、「Netflixって結構こういうスラッシャー映画作るよな」という既視感でもある。『ザ・ベビーシッター』2部作を筆頭に、『誰も眠らない森』、キング原作の『1922』、ドラマの『スラッシャー』や最近配信された『クラシック・ホラー・ストーリー』などなど。それぞれR指定のあるものばかりだが、自社製作であるのと配信という形態だからこそ、ホラーやグロ描写が強い作品をどんどん作っていきやすいのはあるだろう。

『フィアー・ストリート Part1:1994』

 『フィアー・ストリート』3部作も一見、子供から大人まで老若男女が見やすく楽しめそうな雰囲気のある作品だが、いざ蓋を開ければなかなかにグロいし、想像以上に血もすごくて驚いた人もいるのではないだろうか。ちなみに、これには監督の持つ強いこわだりが反映されていて、先述のインタビューでは以下のように語っていた。

「個人的なルールをいくつか持っています。まず映画がエッジィであること。クールに感じられることです。そして私の年齢でも観たいと思えると同時に自分が13、14歳だったら観ちゃいけないような……それでも観るんだけどね、って映画であることです。製作の初期の段階から、割と『こんなに血みどろである必要はある?』って聞かれてきましたが、その度にイエスと答えてきました。ただ、『1978』のラストを撮っている時は、あまりにも私たちが疲れていて、私が『もっと血を!』と言い続けていましたね。全てが血まみれになっていたのは、私のその時の気持ちも表れているのかも」

『フィアー・ストリート Part2:1978』メイキング

 そんな本作は、実は初期の段階から監督が「マーベル・シネマティック・ユニバースのNetflixホラー版みたいなものにしたい」と、ユニバース化を視野にいれてきたものだ。『グースパンプス』で知られるR・L・スタインの手がけた原作書籍もシリーズだったり、パート3のエンドクレジットで続編を示唆するようなシーンが入っていたり、すでにその種はまかれているように思える。

 実は『フィアー・ストリート』のように、同じキャストに別の役を演じさせながら、それぞれタイムラインの話に登場させる手法は『アメリカン・ホラー・ストーリー』と同じものだ。そしてそのようにして『アメホラ』もユニバース化を成功させている。お手本がある分、道はずいぶん開けているし、ドラマシリーズではなく映画としてシリーズを作っていくやり方は打ち切りも避けられるし、Netflixにとって視聴者への新たなアプローチにもなる。今回のようにまた違う時代と殺人鬼をテーマにしてもいいし、ホラーのクリエイティブの可能性がどんどん広がっていくような意義もこめて『フィアー・ストリート』はNetflixの中でもやはり面白い立ち位置にある作品だ。

(参照:Leigh Janiak Redefines ‘Netflix And Chill’ With Horror Trilogy ‘Fear Street’: It’s “A Hybrid Of Traditional Television Content And Movies”|Deadline) 

■配信情報
『フィアー・ストリート Part1:1994』
『フィアー・ストリート Part2:1978』
『フィアー・ストリート Part3:1666』
Netflixにて独占配信中

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる