『フィアー・ストリート』3部作は何を描いた? Netflixとスラッシャー映画の相性

『フィアー・ストリート』は何を描いた?

 ティーンエイジャーが血まみれになって殺人鬼に追われて、時に惨殺されたり時に立ち向かって返り討ちにしたりするような作品が好きなら、Netflix新作映画『フィアー・ストリート』は間違いなくオススメ。

 1994年、1978年、1666年と3世代にわたって描かれる一つの街「シェイディサイド(影の多い街)」の悲劇を描いた3部作だ。1作目の『1994』の登場キャラクター、主人公のディーナと引きこもりの弟ジョシュが、ディーナの元カノであるサマンサが受けてしまった魔女の呪いを解こうとする物語が軸となっている。

 その魔女の呪いの起源を辿るように70年代、そして開拓時代に時系列を戻して見せるやり方は伏線回収もしっかりされていくので観ていて気持ちがいい。何より、7月2日に1作目が配信されてから毎週末に続編が更新されていったので、続きにワクワクする気持ちと記憶が新しいうちに観られる飽きのこなさのバランスが絶妙だったように思う。本作の監督であるリー・ジャニアックも3部作を劇場で観る前提のカラーリングやミキシングを行ったが、結果として立て続けに作品を世に出せたことで一つのイベントとして成立させられたことに満足し、「(続編を)長い期間待たなくていいのもよかった、私も待つの嫌いだから」と、Deadlineでのインタビューにて語っている。

3部作がそれぞれ影響を受けた作品とは

 リー・ジャニアックは2014年の『ハネムーン』でデビューし、これまでテレビドラマ『スクリーム』や『アウトキャスト』の数話を監督してきた。そんな彼女にとっても意欲的なプロジェクトとしてその存在感を世に放ったのが『フィアー・ストリート』3部作である。事前に携わっていた作品でもある『スクリーム』は90年代のスラッシャー映画の金字塔としても知られていて、もちろん『1994』パートでも冒頭のモールで殺害されるシーンのカメラワークからもわかるように映画のエッセンスになっている。

『フィアー・ストリート Part1:1994』

「私は90年代の時に10代で、『スクリーム』はその歳で初めて触れたホラー映画の一つです。圧倒されましたね。新たなタイプとして、ジャンルはさておき当時作られた中で最も良くできた映画だと思います。『ラスト・サマー』などもその後登場して、スラッシャー映画ブームを作りました。『フィアー・ストリート』の原作が90年代を舞台にしていると知った時から、これらの作品からは大きな影響を受けていますね」

 シリーズを楽しめる大きなポイントは、それぞれの作品で時代とジャンルの違うスラッシャーホラーを堪能できることだ。先のような『スクリーム』的な90年代、キャンプを舞台にした70年代、ゴシックホラー寄りの1600年代と、全部ストレートなのがわかりやすくて観やすい。「1978年のパートは70年代映画のカメラの動き、トーンにすることに注力し、お決まりのヴァージンの良心的な女の子が二人登場する点を少し風変わりにしました。もちろん、『13日の金曜日』は参考になっていますね。サマーキャンプを舞台にしたホラー映画を作る上で、あの作品は避けられないでしょう」

『フィアー・ストリート Part2:1978』

 そして1600年のパート3はテレンス・マリックの『ニュー・ワールド』を参考にしたという。「美しくて、素晴らしくてピュアな世界を開拓者がやってきて破壊する。非常に不快で、汚染されていく様子は私たちが三作目でやりたかったことに沿っていて完璧でした」

3世代をまたいで描かれる作品のテーマ

 本シリーズはまとめて3作一気に撮影されていることもあり、その作り方も含めて非常にテレビ映画的だ。そこで描かれるのは、社会または街における“アウトサイダー”たちの物語である。阻害される理由は時に人種であったり、セクシュアリティであったり。ジェンダーに加え、社会的な地位の差が影響していて、それが「シェイディサイド」と「サニービル」の大きな溝と神話に根本的に関わっていくのだ。90年代は引きこもりでナードな黒人の男の子、家が困窮で薬の売買をしている白人の男の子。70年代は周りと違うだけでいじめられた強気な妹と、容姿をどう繕っても出身地で全てを判断される“呪い”に苦しむ姉。そんな彼らを永遠に追い詰めていく殺人鬼たちが象徴するのは、何世代にわたっても彼らが住む悪の環境から抜け出す方法がないという、“逃げられない不平等さ”だ。

『フィアー・ストリート Part1:1994』

 特にフォーカスが当てられているシリーズの主人公ディーンとサマンサのカップルも、パート1では周りの目と住むところ(階級)の違いによって引き裂かれ、サマンサは異性の恋人を作ろうとしていた。しかし、二人はそれでも愛し合っていて、彼女たちのその愛が物語の根幹を担っていく。そしてそれがパート3となる1600年代、同性カップルに対して寛容でないどころか、“邪悪”で魔女と指さされてしまう時代から90年代まで続くものだったことが明かされたとき、彼女たちが時代を経て“否定”から生還したというラストに意味を感じさせられる。

『フィアー・ストリート Part3:1666』

 しかしジャニアック監督はこれに興味を持ち、3部作を通すことで、キャラクターたちが違う方法でそれに反撃し、打ち勝つことを描き切れたという。さらに、本来なら映画開始20分で殺されてしまうようなキャラクターを、あえてより長く生きさせることも重要視したらしい。



インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる