豪華絢爛ムービーをスクリーンで 細田守監督最新作『竜とそばかすの姫』の仮想空間に恍惚

 そして注目なのは声優陣。本作は冒頭から歌唱シーンが描かれるほどに「歌」が重要な作品です。そんな本作の主人公・すず/ベルを担当したのは、シンガーソングライター中村佳穂。先ほど「ベルが自由奔放に歌い出す」と書きましたが、中村佳穂自身もライブでは自由奔放にステージを動き回り、歌ひとつでバンド全体を操ることができるアーティスト。冒頭シーンから、ベルは彼女でしか成立しない役だと確信しました。一方で現実世界を生きるすずは、心を閉ざした陰りを含んだ女性。仮想世界で生きるベルとは異なり、震えているかのような線の細い声ですずを演じていて、中村佳穂であることを忘れてしまうほどにキャラクターに馴染んでいました。歌唱力はもちろんですが、声の演じ分けも絶妙で、本当に素晴らしいキャスティングだとつくづく感じます。

 本作には他にも、成田凌、染谷将太、玉城ティナ、役所広司、佐藤健……と演技力に定評のある俳優たちも多数出演。そうした中でも抜群の存在感をみせていたのが、すずの親友ヒロちゃん役を演じたYOASOBI・幾田りらでした。“毒舌女子”というキャラクターなのですが、抑揚を思いっきり効かせた演技でキュートに好演しています。幾田の声優としてのポテンシャルに驚きましたし、もっといろんな役どころを見てみたくなるほどに魅力的でした。

 そのほか、音楽には、Netflixアニメ『Ultraman』などの音楽制作に携わったLudvig Forssellや、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)での劇伴が記憶に新しい坂東祐大も参加していたりと、キャスト、スタッフがとにかく豪華。内容は「現実」×「仮想」というテーマに止まらず、恋愛、サスペンス、家族問題、コンプレックスとどう向き合うか、など……少々詰め込みすぎ感もありますが、映像から音楽まですべてにおいて制作チームの熱量をひしひしと感じる作品でしたし、「映画館で映画を観る」という意義を改めて考えさせられました。ぜひ、劇場で観てみてほしいです。

■公開情報
『竜とそばかすの姫』
全国東宝系にて公開中
監督・脚本・原作:細田守
声の出演:中村佳穂、成田凌、染谷将太、玉城ティナ、幾田りら、森川智之、津田健次郎、小山茉美、宮野真守、役所広司ほか
企画・制作:スタジオ地図
製作幹事:スタジオ地図有限責任事業組合(LLP)・日本テレビ放送網共同幹事
配給:東宝
(c)2021 スタジオ地図
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