『デッドプール』が“一応”MCU入り? ライアン・レイノルズ“ネタ動画”の面白さを解説

 毎度お馴染み、俳優ライアン・レイノルズの大喜利動画。今回はかなり手が込んでいる。延期が重なった彼の主演作『フリー・ガイ』のプロモーションの一環として出された以下の動画は、彼がシグニチャーキャラクターのデッドプールとして登場しているのだが、約4分半の動画内の情報量が凄まじいので整理したいと思う。

Deadpool and Korg React

 さて、デッドプールはこの動画を、YouTuberが投稿する動画の中でも人気の高い、リアクション動画風に撮影。「デッドプールの最高リアクション」というタイトルとともに始まると、動画視聴者に対して「やあ、リアクション動画ファンのみんな。デッドプールだよ」と挨拶をしながら、これまたYouTuberお馴染みの「チャンネル登録とペイトリオンのフォローよろしく」と前置き。そして「みんな先週の俺ちゃんの『クルエラ』予告編のリアクション動画を気に入ってくれたみたいだね」と言うと、「犬はどこだよ」と悪態をつく様子が一瞬インサートされる。

「さて、今週俺ちゃんがリアクションするのは、正直1年前に出たはずだと思っていた映画『フリー・ガイ』の予告編だ。どうやら8月に公開されるらしい」

 このように、デッドプールが『フリー・ガイ』をネタにするというのはこれまでの仕掛けからも、レイノルズがやりそうな想定内のこと。しかし、今回の動画がすごいのは、その “特別ゲスト”の存在だ。ズバリ、『マイティ・ソー バトルロイヤル』に登場したタイカ・ワイティティ演じるコーグ。同作で監督兼コーグ役だったワイティティは、何を隠そう『フリー・ガイ』に出演しているのである。

 「最初の選択ではなかった。他のみんながDisney+で忙しそうだったから、仕方なくコイツにした」と言いながら自己紹介を求めるデップー。「やあ、俺っちは岩でできている。この場に呼んでくれてありがとう、ポール。君が死んで残念だ」と挨拶するコーグだが、この“ポール”というのはレイノルズ主演の『[リミット]』(2010年)ネタ。主人公ポールは気が付いたら棺の中に閉じ込められていたという脱出密室系サスペンスで、つまりコーグの発言はもう一番やっちゃいけないネタバレだ。

 そんな彼に「やれやれ」という様子で『フリーガイ』の予告編を流し始めるデップー。「僕の名前はガイ」という主人公に対して「彼の名前はガイっていうのか、映画のタイトルと同じだね」と発言。それにコーグは「なんて頭のいいやり方だ……でしょ?」と返し、2人は顔を見合わせる。

 そこからしばらく見ていたが、突然止めるとコメントを読み出すデップー。「“映画の内容見せすぎ”とか、“ライアン・レイノルズがライアン・レイノルズしてるだけ”ってコメントがきてるね。正直後者は俺ちゃんにとって失礼なんだけど」

 そして予告編が再開。主人公のナレーションが「そして彼女に出会った」というところで画面にジョディ・カマーが登場すると、コーグがジョディ・フォスターと間違える一幕も。「俺、彼女の大ファンなんだよね」と話すデップーは続けて「映画の中で“フリッジング”されなきゃいいけど」と言う。この“フリッジング”とは、男性の主人公の成長などの動機付けのためにヒロインなどの女性キャラが悲惨な目に遭うことを指しており、その名称の元ネタになったのは他でもないコミック版『グリーンランタン』(1994年)。ヒロインがヴィランに絞殺されたあげく死体を冷蔵庫に詰め込まれた、というエピソードに因んでいる。グリーンランタンといえば、レイノズルの黒歴史! デップーは“フリッジング”の意味を上記のようにコーグに説明しつつ、「つまり『デッドプール2』ってこと」と結論づける。確かに、『デッドプール2』も主人公の成長のために冒頭でヒロインが爆死している……。

 再び予告編を見ていくと、『フリー・ガイ』に敵役として登場しているワイティティ本人が登場。椅子に座って手足を上に投げ出すシーンで一時停止しながら、「このヴィランについて、どう思う?」とコーグ(ワイティティ)にデップーが聞く。「んー、4つの腕があるようだね。下方の2つの手には手袋をしている。気に入ったよ」と意味がわからないけど“当たり障りのない良さげなコメント”をするコーグに、「お前さてはDisney+で番組持ってるんだろ、クソ野郎」と皮肉を込めてツッコむデップー。その後、再び予告編にワイティティがアップで映されると「こいつ、タイカ・ワイティティ」と教えてもらったコーグは「めちゃくちゃいい人そう」と自画自賛(?)。

 最後まで見終わって「面白そうじゃん」とコメントするデップーは「アウトレットのセールみたいな感じで、『デッドプール3』のことを心配しているカナダ版(ベネディクト・)カンバーバッチの気晴らしになるかは若干怪しいけど」と自分をカンバーバッチ呼びし始め、予告編を「4アボカド」とレーティングした。コーグにつけた点数を聞くと「俺っち、アボカドに育てられた」とまた意味不明なことを言うので「いい加減にしろよ早く俺を殺せ」とデップーもお手上げ。

 動画の最後には、デップーからMCU入りのコツについて聞かれたコーグが、以下のように答える。

「夢を持つ。そして追いかける。そして夢を失う。夢を追及するために、あらゆる類の幸せを避けて、てっぺんまで上り詰めて、頂上についた瞬間、地上に真っ逆さまに落ちて『絶対この夢は叶えられない』と気づく。そのタイミングで、メールを確認するんだ。たぶん自分のマネージャーから『マーベルが話がしたいって』って連絡が来ているから」

 それを聞いたデップーは、最後に「いや、俺ちゃん『ダーク・ワールド』の方が好きだったわ」と遠回しにコーグ(と、ワイティティ)をディスって動画は終わった。

 ライアン・レイノルズ本人ネタも多いが、何より『フリー・ガイ』に『クルエラ』、『デッドプール』にMCUをこんなふうに絡められたのも、それらが全てディズニーブランドだから実現したこと。そう考えると、もう今後はどんなコラボが(特にデッドプールにおいて)起きても不思議ではないのかもしれない。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。InstagramTwitter

■公開情報
『フリー・ガイ』
8月13日(金) 劇場公開
監督:ショーン・レヴィ
出演:ライアン・レイノルズ、ジョディ・カマー、ジョー・キーリー、タイカ・ワイティティほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2021 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
公式サイト:movies.co.jp/FreeGuy

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