このシーンには、『刑務所のルールブック』で薬学部出身のハニャン役を演じたイ・ギュヒョンがカメオ出演している。『賢い医師生活』と同じ制作陣よる『刑務所のルールブック』（注：原題訳は『賢い監房生活』）は、獄中の人間模様をコメディを交えて描き、ジュンワン役のチョン・ギョンホが刑務官を演じている。過剰防衛による殺人、横領、詐欺、そして冤罪も含めさまざまな事由で収監されている囚人たちは、世間から犯罪者のレッテルを貼られ色眼鏡で見られる存在。刑務官は、起訴事実と受刑者の人間性の両面を見ながら社会復帰を目指した更生指導を行う。『刑務所』こそ、人や物事を断片的に見るのではなく、多面的に見て判断する必要性を訴えたドラマだ。

　イ・ギュヒョンは、このドラマに出演している多くの俳優同様に舞台やミュージカルで活躍したのちに『秘密の森』（2017年）と『刑務所のルールブック』で注目を集め、『ハイバイ・ママ』（2020年）では主演を務めた。次回作は、オリンピック開催に湧く1988年のソウルを舞台にカーチェイスを繰り広げるNetflixオリジナル映画『Seoul Vibe（英題）』で、ユ・アイン（『#生きている』『バーニング 劇場版』）、コ・ギョンピョ（『応答せよ1988』『プライバシー戦争』）らと共演する。イ・ギュヒョンは自身のインスタグラムアカウントで、「江南で薬局を経営するユ・ハニャンです。彼女の名前はアン・チホンです」と、気の利いたコメントを投稿している。

　『賢い医師生活』のシーズン1でソンファに想いを寄せるレジデントのアン・チホン役を演じていたキム・ジュンハンは、『刑務所のルールブック』でハニャンにとって大切な人物として登場する。ファンサービスに終始しがちなカメオ出演も、物事をあらゆる方向から見て補完するこのドラマの特性と第3話のテーマにぴったり合った特別な演出になっている。

　今週のバンド演奏曲は、日本でもよく知られる「釜山港へ帰れ」のチョー・ヨンピルによる1999年の楽曲「僕はお前が好き(I Like You)」。シーズン1の「偶然に出会った君」のようなアップテンポの曲で、シーズン2の制作発表記者会見で「僕には音楽のDNAがないようだ」と発言し笑いを誘ったチョン・ギョンホのギターソロもある。

　ロックバンドBusker Buskerのチャン・ボムジュンが歌うサントラ版も各種ストリーミングサイトで配信されている。

　「主人公たちの心情が吐露されることがない」と書いたが、英題が『Hospital Playlist』だけあり、毎週演奏されるバンド曲だけは彼らの感情を代弁している。このエピソードがターニングポイントとなり、物語は後半戦に突入していく予感がする。

　もう一点。ここまでの3話でもシーズン制を活かしたパラレル演出が随所に登場している。1話の緊急患者搬送、2話の先輩教授の態度とソンファへの贈り人不明のギフト、3話の外科教授会とイクスンの事故。次週を心待ちにする間、シーズン1の同じエピソードを再視聴することをお勧めする。

　『賢い医師生活』S2第4話は、7月8日夜に配信予定。

■平井伊都子
ロサンゼルス在住映画ライター。在ロサンゼルス総領事館にて3年間の任期付外交官を経て、映画業界に復帰。

■配信情報
『賢い医師生活』
Netflixにて配信中
写真はtvN公式サイトより