『ドラゴン桜』から今泉力哉監督作品まで “今一番気になる女優”志田彩良のこれまでを追う

今泉力哉監督作品に欠かせない存在に

 そんな志田彩良のキャリアを語る上で欠かせない存在が、今泉力哉監督だ。『ひかりのたび』の次に出演した映画作品『パンとバスと2度目のハツコイ』では、ずっと好きでいてもらえる自信も、好きでいられる自信もないという理由から結婚を断った主人公の妹役を演じる。少し不器用である姉を慕い、支える心強いキャラクターという役柄で、少しこれまでとは違う印象。それでも。その後、今泉監督が撮ったマヒトゥ・ザ・ピーポーのMV「失敗の歴史」にも出演する。

マヒトゥ・ザ・ピーポー / 失敗の歴史(Official Music Video)

 普段よりもアンニュイな雰囲気の彼女がドライヤーで髪を乾かす様子が印象的で、鏡の中の自分を見つめているようで本当は何を見ているのかわからない。志田彩良の最も特筆すべき魅力は、何を考えているのかわからないという“秘密性”にあるのではないだろうか。だからこそ、私たちはつい知りたくなって、気がついたときにはずっと気になっている。彼女から目が離せない。

 そしてドラマ『his〜恋するつもりなんてなかった〜』(2019年/メ〜テレ)や舞台『街の下で』(2019年)、そして田中圭主演映画『mellow』(2020年)と、今泉監督作への出演が続く。つい先日には、2021年10月公開予定の彼の最新作『かそけきサンカヨウ』で主演を務めることが決定した。

『mellow』(c)2020「mellow」製作委員会

 特に今泉監督の作品の中では、彼女は強くてかっこいい女の子を演じていることが多いように思える。それが顕著に見て取れるのが『mellow』での浅井宏美役だ。彼女は田中圭演じる花屋の店主に密かな恋心を抱いている。一方で、バスケ部の後輩の女の子にも想いを寄せられ、告白される。この時、彼女は後輩の気持ちには答えることができないものの、拒絶をするのではなく、一緒に屋上でお弁当を食べようと誘う。そうすることで二人の間が気まずくならずに済み、宏美も自分に好きな人がいるが告白はしないと自分の秘密を打ち明ける。結局、宏美は告白をすることになるが、その時は後輩が力を貸してくれた。

『mellow』(c)2020「mellow」製作委員会

 本作では様々な片思いと告白が錯綜する。もちろん、中には上手くいくものも、いかないものもある。しかし、なかでも宏美は相手が自分の恋愛対象であるかないか以前に、好意を持って告白という勇気ある行動をとってくれた相手として見つめ、その気持ちを決して無下にしない。答えられなくても、リスペクトしてその気持ちを大事にする。一見簡単なようで、結構難しいことをやってのける宏美は、とてもかっこいい女の子で、志田彩良が演じていることでよりキャラクターの奥行きや説得力が生まれている。

 今泉監督の作品に多く出る彼女はインタビューで時折、監督からどんな指示や指導を受けたのか聞かれる。しかし、決まって彼女は「今泉さんは何も言わずに一旦やってみて、と言うように自由に演じさせてくださり、私たちの演技を取り入れてくださる。あまり監督がこうして欲しいという要求を仰るよりは一緒に考えていくやり方」と答えている(引用:志田彩良「本当に可愛らしくて素敵な作品」映画『mellow』【インタビュー】|映画ログプラス)。この撮り方は監督本人も各媒体のインタビューで同じことを言っているので、本当にそうなのだろう。そう考えると、今泉監督作に出演している“志田彩良”は、どの作品よりも彼女らしさを感じることのできる志田彩良なのかもしれない。

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