『コタローは1人暮らし』山本舞香との心温まる交流 横山裕演じる狩野の優しさと覚悟

 アパートを出ていかなくとも、警察に相談すれば何とかなるという美月にコタローは言う。

「おぬしの好きな者が、悪者になってしまうのであるぞ」

 わらわは父上を悪者にしてしまったーー。コタローは目を伏せてそう呟いた。第5話で、青田(間宮祥太朗)にも話していたことだ。コタローは大好きな美月に、自分と同じ想いをさせたくはない。

 諭すようなコタローの言葉に気持ちがほどけたのか「楽しい思い出もあったんだよ」と、涙を浮かべる美月。「わかるぞよ」と、コタローは大きく瞳を開いて頷く。その瞳は、青田の「あごひげじいさん」を見たときと同じだった。きっと、本当に「わかる」のだ。コタローの想いを受け、これからについて考える美月の部屋には、コタローとの思い出やこれからの予定がたくさん詰まっていた。

 狩野は、弁護士の綾乃(百田夏菜子)に詳細を訊ねる。父親の家庭内暴力がエスカレートしたある日、コタローは母親を救うべく、初めて周りに助けを求めた。その結果、父親は逮捕されたのだという。コタローがしたことは、なにひとつ間違いではない。けれどコタローは「自分が父親を悪者にしてしまった」という罪悪感をずっと背負い続けている。ひとり部屋に佇む、その小さな背中に。

 1週間後。アパートを出ていく美月は、別れ際、コタローに大切なことを伝えた。「コタローちゃんがお父さんにしたことは間違っていない」。なぜならそれは、コタローと父親のためになる行動だったから、と。全ての視聴者がコタローにかけたい言葉を、美月が優しく、強く伝えてくれた。

 そばにいることだけが愛情ではない。大切だからこそ、手を離すこともある。コタローは、美月の身の安全が守られるように、美月は、コタローに迷惑をかけぬように。「ずっと一緒」が守れないことを謝る美月に、約束など忘れたというコタロー。美月の服ではなく、我慢を拳に握りしめる。強がりが切ないが、とくに美月の前では、強い男でありたいのかもしれない。

 最後までお面で涙を隠し、両手で狩野と田丸(生瀬勝久)のズボンをキュッと握る、コタローの後ろ姿がいじらしかった。「大好き」と抱きしめてくれる美月は「アパートの清水」を出て行ってしまったが、コタローのそばには、男同士の友情があった。

 ラストでは、コタローの父親が「DV 治療」と検索していたらしいことが判明。その意味を問われた狩野は「おまえとまた仲良く暮らせるように、もしかしたら頑張ってた」と答える。

 狩野の言葉を聞き「もっと強い人間になる」と、希望に満ちた表情で誓うコタロー。二度と父上が叩かなくてすむようにーーコタローが目指す、ずれた「強さ」を狩野は否定しない。

 優しくコタローを見つめ、「そっか」とだけ言い、並んでグビっと牛乳を飲む。「一緒に強くなる」。第5話でそう約束した、狩野の優しさと覚悟を感じた。

■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。Twitter

■放送情報
『コタローは1人暮らし』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30~0:00放送
出演:横山裕、川原瑛都、山本舞香、西畑大吾(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、百田夏菜子(ももいろクローバーZ)、生瀬勝久、光石研、峯村リエ、大倉孝二、イッセー尾形、出口夏希
原作:津村マミ『コタローは1人暮らし』(小学館)(『ビッグコミックスペリオール』で連載中)
脚本:衛藤凛
音楽:篠田大介
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日)、尾花典子(ジェイ・ストーム)、松野千鶴子(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
監督:松本佳奈 ほか
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日、ジェイ・ストーム
(c)津村マミ/小学館(『ビッグコミックスペリオール』連載中) (c)テレビ朝日

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