岡田将生、アクの強さが光る 『大豆田とわ子と三人の元夫』で見える“性格派俳優”の現在地

 彼のキャリアを振り返ってみると、このように一筋縄ではいかないキャラクターを実に多く演じてきていることが分かる。『悪人』(2010年)で演じた浅ましい大学生役もこれに当たるだろうし、『何者』(2016年)で扮した“意識高い系”の大学生役もそうだ。『伊藤くん A to E』(2018年)での、自意識過剰で平気で他者を傷つけるデリカシーゼロな主人公役は、“モンスター級痛男”という役の肩書きに恥じぬ素晴らしさだったと思う。

『伊藤くん A to E』(c)「伊藤くん A to E」製作委員会

 いずれもがまったく異なる方向性の“ヤバい男”の役なのだが、やはり近年の代表的なキャラクターといえば、朝ドラ『なつぞら』(2019年/NHK総合)で演じた愛すべき男・奥原咲太郎で間違いないだろう。彼は周囲の者が困っていると居ても立っても居られなくなる善良な男。非常な情熱家であるがゆえに空回りすることも多く、果ては彼の行動が完全に裏目に出ることもあった。しかも同作は連日放送される朝ドラである。つまり視聴者は、ツッコまずにはいられない咲太郎の振る舞いに、彼が登場するたびに付き合わされたわけだ。筆者はなんど彼に笑わせられ、呆れさせられたか分からない。岡田のキャリアにおける、代表的な“ヤバい男”である。

 スマートな見た目ながら、先述してきたようなギャップのあるキャラクターを演じれば、岡田の右に出る者なしだ。とはいえ、正統派のラブストーリーから時代劇などの作品ジャンルに関してはもちろん、彼がさまざまな役どころに挑んできたのもまた事実。デビュー以来、停滞している時期などなかったように思える。一辺倒な演技の道だけでなく、幅広く挑戦し続けてきた結果が、いまに繋がっているのではないだろうか。“性格派俳優”としての地位を確立させた岡田将生の現在地が、『大豆田とわ子と三人の元夫』には見られるような気がする。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

■放送情報
『大豆田とわ子と三人の元夫』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:松たか子、岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平、市川実日子、高橋メアリージュン、弓削智久、平埜生成、穂志もえか、楽駆、豊嶋花、石橋静河、石橋菜津美、瀧内公美、近藤芳正、岩松了ほか
脚本:坂元裕二
演出:中江和仁、池田千尋、瀧悠輔
プロデュース:佐野亜裕美
音楽:坂東祐大
制作協力:カズモ
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/mameo/
公式Twitter:@omamedatowako

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