視聴率だけでは評価できない傑作ドラマ 『まめ夫』『コントが始まる』に視聴者がアツくなる3つの共通点

(3)作家性が際立つドラマ

『コントが始まる』(c)日本テレビ

 『まめ夫』は民放での連続ドラマ脚本執筆が『anone』(日本テレビ系)以来3年ぶりとなる坂元裕二。主演の松たか子とは前出の『カルテット』や『スイッチ』(テレビ朝日系)に続き3度目のタッグだ。

 『コントが始まる』の脚本を担うのは金子茂樹。2004年にフジテレビの「ヤングシナリオ大賞」を受賞し、近年の代表作は生田斗真主演の『俺の話は長い』(日本テレビ系)。

 この坂元、金子両氏の共通するのは何と言ってもその高い作家性だろう。彼らが書くせりふを聞いていると、日常の何気ないやり取りの中でふと胸を突かれるような感覚や、泣くほどではないけれど、思い出すのはツラくてそっと心の引き出しにしまったあれこれが、登場人物たちに再現されているような気持ちになる。まさに会話劇の妙。ささやかな言葉の積み重ねが深いグラデーションとなり、ドラマとしてうねるさまを観ていると、過ぎる日々の中で忘れていたいろいろな感情が優しく刺激される。

 強いパンチ力やインパクト勝負でなく、繊細な言葉で紡がれる物語。『まめ夫』や『コントが始まる』の満足度にリンクしない視聴率低迷の理由はこのあたりにあるのではないだろうか。

 つまり、2作とも「視聴者が真剣に向き合わなければその本質が伝わらない作品」なのだ。スマホ片手になんとなくテレビをつけていたり、家事や他作業をしながらの視聴では作品に込められた丁寧で繊細な空気感が伝わらない。それを面倒くさいと感じるか、最高だと思うかがはっきり別れるのが『まめ夫』と『コントが始まる』なのだと思う。また、こういうドラマは「絶対に見逃したくない」「時間がある時にゆっくり観たい」と、録画やサブスク視聴を選ぶ人も多い。

『大豆田とわ子と三人の元夫』(c)カンテレ

 確かに、視聴率だけで見ると結果を出しているとはいえない2作だが、長きにわたって語り継がれていくドラマになると確信するし、DVD等が販売されれば、現状、高視聴率を誇っている作品よりその売り上げは伸びるだろう。同じく坂元裕二が脚本を書いた『カルテット』のように。

 そして、完全に偶然であろうが同週に放送された『まめ夫』と『コントが始まる』で同じ食べ物=餃子が存在感を放っていたのもおもしろかった。『まめ夫』では、3人の元夫たちが交際未満の女性たちに辛辣すぎるダメ出しを連発される“地獄の餃子パーティー”が展開し、『コントが始まる』では、解散を決めた「マクベス」3人と中浜、中浜の妹のつむぎ(古川琴音)に加え、潤平の恋人・奈津美(芳根京子)の6人が“優しい餃子会”で笑い合う。

 描かれる世代も世界観もまったく違うのに、作り手の丁寧さとそれに応える俳優陣の巧さが最高の化学反応を起こしている『大豆田とわ子と三人の元夫』と『コントが始まる』。最終話まで登場人物たちの人生の1ページを、少しだけ過去の自分と重ねながらしっかり見つめていきたい。

 2作とも傑作だ。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■放送情報
『大豆田とわ子と三人の元夫』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:松たか子、岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平、市川実日子、高橋メアリージュン、弓削智久、平埜生成、穂志もえか、楽駆、豊嶋花、石橋静河、石橋菜津美、瀧内公美、近藤芳正、岩松了ほか
脚本:坂元裕二
演出:中江和仁、池田千尋、瀧悠輔
プロデュース:佐野亜裕美
音楽:坂東祐大
制作協力:カズモ
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/mameo/
公式Twitter:@omamedatowako

『コントが始まる』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:菅田将暉、有村架純、仲野太賀、古川琴音、神木隆之介
脚本:金子茂樹
演出:猪股隆一、金井紘(storyboard)
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:福井雄太、松山雅則(トータルメディアコミュニケーション)
主題歌:あいみょん「愛を知るまでは」(unBORDE/Warner Music Japan)
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/conpaji/
公式Twitter:@conpaji_ntv

 

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