『ベルリン・アレクサンダープラッツ』主演俳優が作品への思いを語る 「現代社会の象徴」

 5月20日よりMIRAIL(ミレール)、Amazon Prime Video、U-NEXTにてオンライン上映される映画『ベルリン・アレクサンダープラッツ』より、主演を務めるウェルケット・ブンゲのインタビューコメントが公開された。

 本作は、1920年代に出版された現代ドイツ文学の金字塔『ベルリン・アレクサンダー広場』を、ブルハン・クルバニ監督が、愛・金・裏切りに翻弄されるギャングたちの物語として映画化したもの。現代社会が抱える貧困、人種、難⺠の問題を描く。

 アフリカからヨーロッパを目指していた不法移⺠のフランシスは、船が嵐に遭遇したときに、もし無事に上陸できたなら今後は心を入れ替えて真面目に生きると誓う。その後ドイツへ辿り着くことができたフランシスだが、難⺠生活は過酷を極め、裏社会に生きる狡猾なドイツ人男性ラインホルトの手引きで犯罪に手を染めていく。そんな中、ある女性と出会ったことでフランシスは運命を変えようとするが……。

 ブンゲが本作に出演するきっかけは、一通のメール。当初は迷惑メールだと思ったそうで、「私のパートナーがドイツ人で、有名な本のタイトル『ベルリン・アレクサンダープラッツ』と書かれていたのを見つけて、ようやく迷惑メールじゃないことに気付きました。それ以来プロダクションとのやりとりが続き、その年の11月にヨーロッパに戻りベルリンに行く機会をもらってクルバニ監督に会い、キャスティングに参加しました。そこでラインホルト役のアルブレヒト・シュッヘとミーツェ役のイェラ・ハーゼと初めて顔を合わせました。監督が私の演技を気に入ってくれたようで、その翌月になってフランシス役に決まったとの連絡を受けました」とその経緯を明かす。

 原作となる『ベルリン・アレクサンダー広場』や、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督のテレビ映画『ベルリン・アレクサンダー広場』は十分にチェックをしてから撮影に臨んだそうだが、意外なことにオファーまで原作のことを知らなかったという。

「その後、原作は数ページ読んで(笑)、ファスビンダー版のシリーズも2〜3話見ました。でもある時点で私の中でこう気付いたんです。この映画は今までのものを覆す新たな作品なので長編の原作本を最後まで読んだり過去の映像作品に没頭するのにエネルギーを注ぐことは意味がないと思ったんです。約100年前に書かれた原作を読んで寝落ちしてしまったり、80年代に製作されたTVシリーズに没頭するよりも、この作品の脚本を読んでこの世界観に対するイマジネーションを広げ、キャラクターへの理解を深めることに自分のエネルギーと時間を注ぐべきだと思ったのです」。

ウェルケット・ブンゲ

 主人公フランツを演じたことについて、「フランシス役を演じることを通じて、役者として謙虚さを身につける良い訓練ができた気がします。フランシスのようなバックグラウンドの人生を送るということがどういうことなのか、この役を演じなければ考えもしなかったと思います。フランシスを演じること、そしてフランシスという人物を深く理解するのは容易ではありませんでした。また、彼を演じる中でも自分らしさを出そうと心がけました。役者として、作り手として、人として、このような素晴らしい挑戦をする機会に恵まれたことに感謝しています」と感謝の思いを述べた。

 移民としてドイツで生きるフランシスと自身の違いについては、「彼は労働ビザもなくヨーロッパに渡り、作業現場で大怪我をした同僚を助け、それによって職を失い、親友にまで裏切られてしまいます。たとえ彼が自分の価値観を大事にし続けたにも関わらずです。私はその人の置かれた境遇がその人の人格を決めると言えると思います。私とフランシスの大きな違いは、フランシスの人生は危険な境遇の繰り返しであること。それに対し私の人生は様々な場所に身を置いて生きるという挑戦でした。でも私の場合はちゃんと人として扱われていましたので、そこが彼との大きな違いだと思います」と述べた。

 また、本作のことをブンゲは“出会い”だったと語る。「この映画の製作を通じて本当にたくさんの出会いがありました。仲間として共演した兄弟たちもみなアフリカの様々な国からヨーロッパに渡った人たちです。彼らとはお互いのバックグラウンドを色々語り合いました。この作品は2018年に撮影しましたがその後公開まで2年かけて編集され、さらに撮影以前に脚本に5年もかけられた作品であると、いま考えるだけで感動します」。

 最後に、本作が公開されることについて、「この作品は社会状況を反映し、現実で起きている肌の色の問題だけでなく、私たち人間はみなこの世界に共生しているんだということに目を向ける機会を人々に与えたという意味で、映画という形で社会に大きく貢献したのではないかと思います。この作品が描くベルリンは現代社会の象徴です。こういうことを話すと実存主義者とか哲学的とか言われる方もいるかもしれませんが、コロナ禍で公開が叶わなかった映画はたくさんあります。でも私たちの作品は公開されました。スケールの大きな大作ではありませんが、とても繊細な作品です。人々が共感できるストーリーを、どんな状況に置かれた人の心にも響くストーリーを伝えたいと決意した私たちチーム全員が信念を貫いて完成させました」とコメントを寄せた。

■配信情報
『ベルリン・アレクサンダープラッツ』
5月20日(木)より、MIRAIL(ミレール)、Amazon Prime Video、U-NEXTにてオンライン上映
価格:1,500円(税込)/購入から48時間視聴可能/MIRAIL(ミレール)のみ特典付きバージョン(※変更の可能性あり)
監督:ブルハン・クルバニ
脚本:マーティン・ベーンケ、ブルハン・クルバニ
原作:アルフレート・デーブリーン
出演:ウェルケット・ブンゲ、イェラ・ハーゼ、アルブレヒト・シュッヘ、アナベル・マンデン、ヨアヒム・クロルほか
配給:STAR CHANNEL MOVIES
原題:Berlin Alexanderplatz/ドイツ・オランダ/2020年/183分/R15+
(c)Sabine Hackenberg, Sommerhaus Filmproduktion (c)Wolfgang Ennenbach, Sommerhaus Filmproduktion (c)Fre'de'ric Batier, Sommerhaus Filmproduktion (c)Sabine Hackenberg,Sommerhaus Filmproduktion (c)Wolfgang Ennenbach, Sommerhaus Filmproduktion
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