海外ドラマの次は“アジア作品”と“映画” U-NEXT 堤天心社長が語る、水面下の動きと新戦略
「日本も大きな転換期を迎えていく」
ーーコンテンツ以外の現状の課題はありますか?
堤:他社と比較して月額料金が高いということは当然認識しています。ですが、料金に関しては2つの考えがあると思っています。値段を下げるという考えと、今の月額料金である2189円に見合った価値を提供するという考えです。U-NEXTポイントという制度を取り入れて、そのポイントで新作映画のレンタルや電子書籍が買えるというのが現在ですが、将来的に音楽のサブスクも取り入れる予定なので、そうすればより満足感を持っていただけるんじゃないかと思っています。
ーー書籍や音楽配信分野においては、また違った競合他社がいます。
堤:音楽出版、書籍出版は「取り次ぎ」というリアルな業界の習慣をデジタルでも引き継いでいるので、音楽サブスクや電子書籍の配信においては、基本的に品揃えの差別化がむずかしいのです。けれど、ユーザーにとってはニーズがあるジャンルと認識していますので、そういったものを取り入れて、われわれのポイントサービスに組み合わせていきます。音楽・書籍単体で勝負すると大変ですが、映像のサブスクリプションサービスと最新作を楽しめるトランザクションサービスの組み合わせをユーザーも求めているという仮説と、さまざまなメディアを組み合わせることで単体の書籍サービスや音楽サービスとは違う優位性が出せるという2つの仮説で動いています。ワンアプリにこだわっている理由もそこに起因します。
ーー様々なサービスが一緒になったアプリの回遊率をいかに高めるかだと。
堤:我々はグローバルOTTのように大資本を一気に投資する戦い方はできないので、違う戦い方で市場のポジショニングを狙っているということです。競争戦略の観点から生まれた発想でもありますし、海外のバンドルキャンペーンの動きにも可能性を感じています。
ーー海外では、バンドルでの売り出し方はすごく一般的ですよね。
堤:そうなんです。SpotifyとHuluのバンドもありましたし、AmazonやAppleも異なるサービスを統合して1つのブランドとして提供するという意味合いでは戦略的に近いですよね。「サブスク、何に入っていますか?」と聞くと、音楽のサブスクと映像のサブスクの両方に入っているというのが海外では一般的ですし、当社が将来的に音楽の聞き放題と映像の見放題を合わせて約2000円で提供できれば、ユーザーの方々の相場感としても決して高くはないのではと考えています。
ーーSVOD市場は活況の一途を辿っていますが、堤さんご自身ではSVOD市場の面白さをどう感じていますか?
堤:今、エンターテインメント業界全体が、デジタル化の波に強烈にさらされています。コンテンツがクロスボーダー案件になってきている。日本でも、そういう志向性は出てきています。特にアニメが一番進んでいますよね。コンテンツの運用・企画・投資などはグローバルにディストリビューション、マネタイズしていく。デジタル化以前はグローバル展開する際にコストがかかっていました。海外にディストリビューションしようとしたら海外のテレビ局にセールスしないといけない。そうなると現地にセールスのブリッジーーある種の支店ーーを置かなければならない。そういう形で世界規模で営業できるインフラを持っているのが、メジャースタジオが“メジャー”たる所以でした。しかし、今はデジタル化によって、その営業のコストが極めて小さくなっています。
ーーデジタル化によってより海外との距離が近づいていると。
堤:グローバルディストリビューションを前提に考えると、今後は国を横断してクリエイターが集まるコンテンツも増えていくと思います。一方で、放送などのメディア産業に関しては、国の法規制にも関わってくるので、どうしてもローカルドメスティックになってしまう。ただ、好む、好まざるに関わらず、コンテンツのグローバル化、デジタル化の波にメディア産業も押され始め、日本も大きな転換期を迎えていくと考えています。