『きれいのくに』“同じ顔”の稲垣吾郎が見せる狂気 第4話は今後の鍵となる回想シーンも
よるドラ『きれいのくに』(NHK総合)は第4話より本章・高校生編へ突入。本作に主人公という立ち位置の人物はいないが、今回、事態が大きく動き出すのがれいら(岡本夏美)である。
れいらは、見知らぬ男性とアプリで出会ってデートをするパパ活で、お小遣い稼ぎをしている。この日もれいらは学校帰りに男性と待ち合わせ。街ゆくほとんどの人がトレンド顔(稲垣吾郎)になってしまった世の中では、前回のパパ活の相手と今回の相手が別人でも同じ顔というパターンが起こる。第1話より極力無駄な情報を省き、考える視聴の仕方を提示してきた『きれいのくに』は、何気ない会話や出来事の中からほとんどの大人が同じ顔をした不条理な国で起きていることを投げかけてくる。
れいらが被害に遭う暴行事件もそうだ。れいらはパパ活相手から街中で堂々とアプリの決済ボタンにてお金を受け取り、カラオケの個室ルームへ。ザ・フォーク・クルセダーズ「悲しくてやりきれない」を歌うれいらと意気投合した男性は、マッサージを要求し、その行動が徐々にエスカレート。性交渉を断られた男性は逆上し、持っていたマイクでれいらの顔を殴打する。ここで思い出されるのは第3話で呼びかけられていた同じ顔による犯罪。れいらの場合、パパ活で起きた事件という後ろめたさから通報できないのだろうが、同じ顔という言わば一つのアイデンティティーを削ぎ落とした状態であれば何をしても平気という気持ちになるのだと気づかされる。
放送前からSNSで話題になっていた「チーム轟」のポスターをバックにれいらを殴り続ける男性。稲垣吾郎は今作で1人何十役を担当しているが、中でもこのパパ活相手は裏表の激しい、狂気的な演技が光る役柄である。
この暴行事件によって、れいらの学校生活にも異変が。それが両親の遺伝子操作でトレンド顔に生まれた中山(秋元龍太朗)の存在。パパ活相手の男性と同じ顔を持つ中山は、れいらにとって見たくない顔へと変わっていくのだ。ある日、仲良しの5人はいつものようにカラオケへ。れいらが暴行に遭った店舗、部屋も一緒。そこにはあの男と同じ顔を持つ中山がいる。耐えきれなくなりれいらは部屋を出ていくがエレベーターの中で嘔吐してしまう。れいらとパパ活相手とのやり取りもそうだが、生々しい描写が多いのも『きれいのくに』の攻めた演出の特徴だろう。