『極主夫道』はなぜコミック調な演出になったのか? 今千秋監督「限界に挑んでみたい」

「龍は立ち位置としてはボケなのが面白い」

――原作もコミカルな作りですが、作品制作を続けていく上で見えてきたものはありますか?

今:最初に取り掛かったときは、龍のキャラクターがあまり分かっていなかったんです。それで、作っていくうちに龍がかわいい人だというのと、「この人、ボケかツッコミでいうとボケの人なんだ」ということに気づいたんです。キャラクターの関係を整理していくと、龍がボケで、雅はツッコミで、虎二郎はボケなんですよね。なので、龍と虎二郎がいると2人ともボケなので、良い意味で話がまとまらなくなる(笑)。虎二郎はアドリブもガンガン入るので、龍が虎二郎の勢いに流され、お話がどんどんアホになっていく傾向があったように思います。

――第3話のスイーツ対決ですね。どんどんお話が転がっていく感覚がありました。

今:あの辺りはまだほのぼの領域ですよ(笑)。これからさらに輪をかけていきますから。龍は、ボケているつもりはないけど、立ち位置としてはボケなのが面白いところです。そこに雅の心のツッコミがあるから成立するコントのような形になっているんです。

――今回はNetflixオリジナルアニメーションという形で制作されましたが、普段のTVアニメを制作するのと違いなどは感じましたか?

今:基本的に私は制作会社のJ.C.STAFFと仕事をしているので、「Netflixさんだから」ということはあまり意識せず制作していました。ただ、Netflixさんの「尺の自由度の高さ」は感じました。『極主夫道』も当初は30分アニメの想定で作業を始めたのですが、1話あたりの尺が全然合わなくなってしまったんです。TVアニメだとなんとかして1話30分の枠に収められるように調整しなければいけないのですが、今回は、Netflixさんで配信ということで、1話15分といった形で発表することができたのは制作する上で非常に助かりました。

――なるほど。30分の定型の枠ではないから自由度も高く制作することができるんですね。

今:ただ、1話あたりの尺自体は、30分アニメの半分くらいになっているんですけど、カット数は250カットくらいになっている話があったりします。通常のアニメだと、30分尺を250カットで制作する作品もあるのですが、仮に『極主夫道』を30分フルで制作したとすると、1話あたり500カットを超える超大作になるんです。そう考えると、カット数に厳しいアニメ業界においては、とても贅沢な作品になっているのではないかと思っております。

■配信情報
Netflix オリジナルアニメシリーズ『極主夫道』
Netflixにて全世界独占配信中
原作:おおのこうすけ
監督:今千秋
キャスト:津田健次郎、伊藤静、興津和幸、細谷佳正、田中敦子、M・A・O、福島潤、斉藤貴美子、野川雅史、柳田淳一、大塚芳忠
シリーズ構成:山川進
主題歌:打首獄門同好会/OP曲「シュフノミチ」、ED曲「極・夫婦街道」
アニメーション制作:J.C.STAFF
(c)おおのこうすけ/新潮社
作品ページ:www.netflix.com/極主夫道

関連記事