『極主夫道』はなぜコミック調な演出になったのか? 今千秋監督「限界に挑んでみたい」

『極主夫道』がコミック調な演出になった理由

 Netflixオリジナルアニメシリーズ『極主夫道』が現在全世界独占配信中だ。本作は、かつて裏社会で数々の伝説を残した元極道の龍が、専業主夫として過ごす日常を描くアットホームなギャグコメディ。声優や俳優、ナレーターなど様々な分野で活躍する津田健次郎が主人公・龍役を務め、TVアニメ『のだめカンタービレ』シリーズや劇場版『美少女戦士セーラームーン Eternal』などの今千秋が監督を務める。

 今回リアルサウンド映画部では、今監督にインタビューを行い、コミック調で描かれた本作の演出の裏側や、Netflixとのアニメ制作について話を聞いた。

「普通の監督がやらないような事をやってみたい」

――『極主夫道』はNetflixで配信されて以降、デイリーランキングで1位にランクインするなど大きな反響が集まっています。漫画をそのまま映像にしたような演出が特徴的ですが、こういった作品作りを行う上で難しさなどはありましたか?

今千秋(以下、今):今回のコミック調の演出においては、まず動かせる素材を全て別セルで作らないといけないんです。それでいうと、撮影さんが特に大変ですね。大量の素材と、シートにみっちりと書かれた指示を元に撮影をお願いしており、シートを読み解くのも、暗号のように難解な内容になっていたんです。例えば、第5話の酉井の姐さんが缶詰をガコっと突っ込むシーンでは、手前の缶詰を引くと、後ろの缶詰がずれて落ちてくるのですが、全てを別セルで動かさなければいけないので、通常の作画で作るより遥かに労力のかかったシーンになっています。

――演出を含めて、今監督の『Back Street Girls -ゴクドルズ-』を思い出しました。そういった経験も今回生かされているのでしょうか?

今:『ゴクドルズ』のときは、原作の漫画自体が元々動きがあまりない作品でもあったので、そういったスタイルがうまくハマる部分もあったんです。一方で、『極主夫道』はどうしてもスタイリッシュで、龍を含む、キャラクターの動きが大きい作品でもあったので、最初は「少し畑が違うぞ」という感覚がありました。

――そういった龍の動きを補完するうえで、演じられた津田健次郎さんに依存する部分もあったのでしょうか?

今:津田さんは、最初の実写版PVの頃から龍を演じられていることもあり、収録初日とは思えぬほど出来上がった「龍」を演じてくださいました。「本物の龍だー!」って。映像が止まっているので、役者さんのセリフだけではなく効果や音楽もドラマCDを録っているような感覚が近いのかな?と、思います。

――『ゴクドルズ』では、OPアニメーションで今監督のダンスを使用した演出が施されていて非常に面白いなと思いました。今回では、そういった“遊び心”を意識した部分はありましたか?

今:面白いとありがたいんですけど、『極主夫道』では、第2話でリョウタ君がコバルトポリスのフィギュアを見つけて遊ぶシーンがありまして、そこで劇中作品の『クライムキャッチポリキュア☆』のテーマ曲が流れます。今回はその歌唱を担当しました。エンドテロップにも出ているので、そこも注目していただければと(笑)。

――まさに“遊び心”が感じられるシーンですね。そういった普通ではない取り組みを続けられるところには、なにかルーツなどがあるのでしょうか?

今:普通の監督がやらないような事をやってみたい!と思っていました。『ゴクドルズ』の“ダンス”に関しても、今回の『極主夫道』の“歌唱”に関しても、普通の作品では考えられないじゃないですか(笑)。そういったアニメ業界の常識を覆すような、限界に挑んでみたいという気持ちが自分の中にあるような気はしています。まとめると『ギャグ作品』ならではの、最強の自虐ネタですかね(笑)

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