坂口健太郎の“肉を切らせて骨を断つ”の精神 『劇場版シグナル』で出された“答え”

 一組の無線機が繋いだ絆は、時空を超えて事件解決に挑む。2018年にカンテレ・フジテレビ系連続ドラマとして日本でリメイクされ大きな話題となった『シグナル 長期未解決事件捜査班』(以下、『シグナル』)は、2021年に『シグナル 長期未解決事件捜査班 スペシャル』(以下、『シグナルSP』)として連続ドラマの“その後”を描く特別番組を放送。その『シグナルSP』の続編となるのが、4月2日に公開されたばかりの『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』(以下、『劇場版シグナル』)である。『シグナル』、『シグナルSP』は韓国ドラマ『シグナル』を原作としているのに対し、『劇場版シグナル』は完全オリジナルの新作である。さらに『相棒』シリーズ(テレビ朝日系)、『探偵はBARにいる』シリーズなどを手掛けた橋本一が監督を務めるということで公開を前に期待が寄せられた。

 『シグナル』は、 “現在に生きる三枝健人(坂口健太郎)”と“過去に生きる大山剛志(北村一輝)”という二人の刑事が、謎の無線機で繋がり長期未解決事件に挑むヒューマンサスペンスである。長期未解決事件捜査班が過去の未解決事件を調べることで現在の重大事件に発展するという繋がりの面白さや、何度時代が変わっても、そのたび無線機で交信を続ける健人と大山の絆が、連続ドラマ放送当初より多くの視聴者の心を掴んだ。もともと非常によく練られたプロットが持ち味であり、連続ドラマを通して事件が丁寧に描かれることでじわりじわりと真相に近づいてゆくさまが好奇心を刺激し作品に没入させる所以となった。また、原作から扱われた事件は、実際に韓国で起こった猟奇事件をオマージュしているものもあることから、その凶悪犯罪のグロテスクさも心に深く爪痕を残す。そんな『シグナル』は映画化されることで、爆破シーンなどの派手な演出や、主役の坂口の手に汗握るアクションなど、さらなる広がりを見せた。

 2021年に政務高官を乗せた車が不審な交通事故を起こす。その時のドライブレコーダーの様子から、ジャーナリストの小泉ミチル(奈緒)は毒物「ヘロン」を使った事件の可能性を追求。「ヘロン」は、2001年に西新宿テロ事件で使用された毒物であり、今回の事故はその残党による犯行である可能性が浮かび上がっていた。健人の所属する長期未解決事件捜査班はこの事件を過去のテロ事件、そして2009年の政務官が相次いで交通事故死した事件と結びつけて捜査を開始する。

 軸となる大きな事件からするりと伝うように過去の事件にたどりつき、健人と大山は再び無線を介して出会うことに。大山が2009年で調べてきた情報は、2021年で重要な証拠となり、事件は真相へと大きく歩みを進めた。また、その事件の背景には『シグナルSP』で描かれた衝撃のラスト、「大山への発砲事件」に関わるエピソードが語られる。健人と桜井(吉瀬美智子)は、未解決事件の真相と共に大山の安否も追いかけており、この二人が大山に向ける熱い想いこそがこの物語に奥行きを与えることになる。